デジタルを含む新たな教科書を制度化 学校教育法等改正法が成立
紙とデジタルそれぞれの良さを生かした教科書づくりを可能とする「学校教育法等の一部を改正する法律」が、令和8年6月10日の参議院本会議で賛成多数により可決され、成立した。これまで紙媒体に限られてきた教科書にデジタルの形態を取り入れ、児童生徒の学びの質を高めることを狙いとする。施行は令和9年4月1日を予定しており、小学校で次期学習指導要領が全面実施される令和12年度以降の導入が見込まれている。
文部科学省は、今回の制度改正がデジタル化そのものを目的とするものではないと説明する。紙だけが認められてきた教科書にデジタルを取り入れて作成できるようにすることで、児童生徒の学びの質を高める点に主眼があるという。
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制度改正後にデジタルを含む新たな教科書は、現行の「教科書代替教材」としてのデジタル教科書とは性格を異にする。代替教材が紙の教科書の内容をそのままタブレット等に表示するものであったのに対し、新制度の教科書では、英語のネイティブ音声や理科の実験動画などを教科書の一部として掲載したり、内容の一部を順番に提示したりするといった、デジタルならではの構成が可能となる。文部科学省は、こうした特性を生かすことで、児童生徒にとってより分かりやすく学びやすい教科書を提供できると見込む。
教科書検定の対象範囲も広がる。これまで教科書の紙面に付された二次元コードの先にある動画や音声、資料といったデジタルコンテンツは、教科書の一部ではなく「教材」として扱われ、検定の直接の対象とはなっていなかった。改正法の施行後は、これらのコンテンツを教科書の内容として検定の対象に含めることで、質の担保を図る方針である。
無償給付の仕組みも整える。改正により、義務教育段階では従来の紙の教科書に加え、デジタルを含む新たな教科書も無償給付の対象となる。教科書の形態については、各教育委員会が「紙」「紙とデジタルの併用」「デジタル」のいずれかを選ぶことになる。
今回の法律は、学校教育法のほか、教科書の発行に関する臨時措置法、文部科学省著作教科書の出版権等に関する法律、義務教育諸学校の教科用図書の無償に関する法律、義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律、著作権法、障害のある児童及び生徒のための教科用特定図書等の普及の促進等に関する法律など、関係する複数の法律を一括して改める内容となっている。音声や動画を含む著作物等の公衆送信などの利用に関しては、著作権の制限規定を拡充する措置も盛り込まれた。
完全にデジタルの教科書をどこまで認めるかについては、慎重な運用が想定されている。松本洋平文部科学大臣は令和8年4月24日の衆議院文部科学委員会で、完全にデジタルの教科書について、小学校4年生以下では認めることは適当ではないとし、国語、社会、道徳の3教科は学年を問わず当面認めるべきではないとの考えを示した。
文部科学省は今後、国会審議で寄せられた指摘も踏まえながら、デジタルな形態を含む新たな教科書の発行、採択、使用が円滑に進むよう、大臣指針や検定基準の策定を進める。指針の検討に向けては、令和8年4月10日に「デジタルな形態を含む教科書の発行・採択等の指針に関する検討会議」が第1回会合を開いており、児童生徒の発達段階に応じた使用のあり方や健康面への配慮などについて議論を重ねたうえで、取りまとめが行われる見通しである。