東京大学大学院農学生命科学研究科と八ヶ岳農業大学校が連携協定締結 次世代農業人材育成へ
東京大学大学院農学生命科学研究科と、公益財団法人農村更生協会が運営する八ヶ岳農業大学校は4月8日、日本における農業の発展および次世代を担う農業者の育成への寄与を目的とした連携協定を締結した。気候変動や資材価格の高騰、サプライチェーンの変化など、農業を取り巻く環境変化を背景に、「テクノロジー」「サイエンス」「マーケティング」を基軸とした新たな生産・経営のあり方や人材育成の枠組みを模索する。
東京大学大学院農学生命科学研究科教授の岩田洋佳氏(左)と八ヶ岳農業大学校校長の丸山侑佑氏
東京大学大学院農学生命科学研究科では、統計遺伝学、データ科学、フェノミクスの融合を基盤として、ゲノム情報、AI、環境データ等を統合的に活用したデータ駆動型の農業および品種改良に関する研究を進めている。特に、圃場における作物の生育を高精度に計測・解析するフィールドフェノミクスとデータ科学を活用したモデル化の取り組みを通じて、栽培と品種改良の高度化を目指している。
一方、長野県諏訪郡原村に位置する八ヶ岳農業大学校は、267ヘクタールに及ぶ広大なキャンパスを活用し、生産から商品企画、流通に至るまでの実践的な農業教育を展開している。2025年4月に就任した丸山侑佑校長のもと、AIやセンシングデータを活用して生産管理や意思決定をするなど、テクノロジーとサイエンス、マーケティングを基軸とした農業の高度化に取り組んでいる。今回の連携により、八ヶ岳農業大学校の実践の場と東京大学の学術的知見を結びつけ、知の創造と社会実装の両立を図る。
連携事項は、農業生産および農業経営の高度化・持続的発展に資する共同研究、フィールドワーク・実習・調査等を通じた学生・研修生の教育および相互協力、農業の高付加価値化や農産物・農業技術の価値創出および社会実装に関する手法の検討、関連する人材育成・情報交換・成果発信などとなる。具体的な取り組みとしては、八ヶ岳地域の圃場を活用したスマート農業に関する共同研究(バレイショ栽培のスマート化など)が検討されているほか、本年7月には東京大学大学院農学生命科学研究科の学生(希望者)を対象とした「全学体験ゼミナール」を2泊3日の日程で八ヶ岳農業大学校をフィールドに実施する。学生は圃場視察や農業体験、実践者との対話などを通じて、農業の現場と課題を学ぶ。さらに、事業開発や経営の知見を有する丸山校長を講師とし、同研究科の学部生・大学院生を対象に、農業アントレプレナーシップに関する講演およびサロン形式の意見交換も予定している。
東京大学大学院農学生命科学研究科の岩田洋佳教授(生物測定学)は「本連携は、教育と研究の双方において、理論と実践を往還する取り組みを進める上で重要な機会になると考えている。本研究科では、データ駆動型農業および品種改良の研究を進めているが、その成果を社会に実装していくためには、生産現場に近い環境での実証が重要となる。八ヶ岳農業大学校との連携により、実践の場と学術の知見を結びつけることで、教育と研究を一体的に発展させ、次世代の農業を担う人材の育成と持続的な農業の実現に資する取り組みへとつなげていきたい」とコメントしている。
八ヶ岳農業大学校の校長 兼 専務理事である丸山侑佑氏は「日本の農業は現在、従事者の高齢化や食料自給率の低下など深刻な課題に直面している。経験や勘に頼りがちであったこれまでの農業の実践を新たな手法へとアップデートしていく必要がある。本協定により、東京大学の高度な学術的知見と優秀な学生の頭脳や柔軟な発想が実践の場に活かされることで、未経験でも収益を上げられる仕組みを構築し、自らの手で農業を変えられると実感する若き農業従事者やアントレプレナーが数多く誕生することを期待する」とコメントしている。