「静かすぎる図書館」に音を持ち込んだら、来館者の6割賛成 半田市立図書館、音環境実証実験の結果が示すもの
株式会社otonoha(所在地:東京都千代田区、代表取締役社長:稲畑伸一郎)は、半田市(愛知県)、株式会社図書館総合研究所(本社:東京都文京区、代表取締役社長:廣木響平)、TOA株式会社(本社:兵庫県神戸市、代表取締役社長:谷口方啓)と協働し、半田市立図書館(愛知県半田市桐ヶ丘4丁目209-1)にて2026年2月5日から3月中旬にかけて、館内の音環境に関する実証実験を実施した。来館者161名を対象としたアンケートをもとに、静寂が前提とされてきた図書館空間において、音や会話を一定程度許容する利用スタイルが受け入れられるかどうかを検証したもので、その結果が6月12日に公開された。
図書館の音環境に対するイメージを尋ねたところ、「静かで落ち着く」と回答した人が約51%(81名)にのぼった一方、「静かすぎて気を遣う」と答えた人も約41%(66名)を占めた。静寂が一定の利用者にとって心理的な負担となっている実態が、データとして可視化された。
株式会社 otonoha公式プレスリリースより
実証では、大規模改修を伴わず、音環境の設計によって空間の使われ方を変えられるかどうかを検証した。otonohaが音環境設計とサウンドシステムの提供・設置・運用を担い、館内1階に植栽型サウンドデバイスを含む3つの実験エリアを設けた。「音あり読書エリア」では、川のせせらぎや鳥の声といった自然環境音やBGMを流し、周囲音をマスキングしながら緊張感を和らげることを狙いとした。「音なし読書エリア」は従来型の静寂環境として比較対象に位置づけ、「会話可能エリア」ではBGMを流しながら小声での会話を許容し、子ども連れや複数人での利用を想定した。
会話可能エリアの設置について賛否を聞いたところ、賛成が60.4%(96名)、どちらでもないが20.0%(31名)、反対が18.1%(28名)となり、過半数の来館者から支持を得た。ただし、反対意見の多くはエリアのコンセプト自体への否定ではなく、BGMの重低音やテンポの速さといった音の質や選曲への不満に起因していた。BGMを「不快」と感じた回答者8名は全員が設置に反対した一方、「快適」と感じた37名のうち86%(32名)が賛成しており、音源の選定が賛否を大きく左右する要因となっていることが明確になった。
音あり読書エリアの利用者72名のうち、「周囲音が気にならなかった」と答えた人は69%(50名)、「快適」と評価した人は68%(49名)に達した。川のせせらぎや鳥の声といった自然環境音の活用が、周囲音のマスキングや心理的な緊張感の緩和に有効であることが示された。
一方、音なし読書エリアの利用者のうち27%(17名)が、他エリアからの音漏れを「気になる」と回答した。会話可能エリアからのBGMや会話が指摘されており、エリアごとに音を分けるゾーニング設計の精度向上が今後の課題として浮かび上がった。
年代別に見ると、高齢層ほど音や会話を許容するエリアに慎重な傾向が見られ、70代の賛成率は31%にとどまった。また、「子ども連れ=静寂に否定的」という単純な図式ではないことも確認されており、会話可能エリアに否定的な回答者のうち約6割が子ども連れであった。利用頻度が高いヘビーユーザーに反対意見が相対的に多かった点についても、BGMの音質や音量といった品質改善を求める声が中心であり、導入そのものへの反発とは性質が異なる。
半田市立図書館の館長は、「音によるマスキング効果によって会話や物音が目立ちにくくなり、静かで快適な環境の維持に寄与することが確認できた」とコメントした。また、初めて訪れる方や子ども連れの方、学生や社会人、高齢者など、誰もが過度な緊張を感じることなく安心して利用できる場所であることも図書館の重要な価値だと述べた。
一連の結果についてotonohaは、重要なのは「音の有無」ではなく「音源の選定」「音量設計」「ゾーニング」といった音環境の設計精度であるとして、オフィスおよび公共空間における音環境コンサルティングのさらなる高度化を推進する方針を示した。