教養は「知のサバイバルキット」 変化に対応する基礎力こそ重要

AI時代に活躍する人材には、数理・データサイエンス・AI「以外」にどんな力が必要か。文筆家で、大学等でのIT人材育成にも携わる山本貴光氏は、諸学の基礎であるリベラルアーツこそが、不確実性の高い社会を生きるための「サバイバルキット」だと指摘する。

明治以来変わらない日本の教育

山本 貴光

山本 貴光

文筆家、ゲーム作家
1994年慶應義塾大学環境情報学部卒業。コーエーでゲーム開発に従事の後、フリーランス。専門学校・大学で非常勤講師としてゲームデザイン、プログラム、哲学などを教える。社会情報大学院大学では三宅陽一郎氏と「人工知能論」を担当(2019年)。著作に『投壜通信』、『文学問題(F+f)+』、『「百学連環」を読む』、『文体の科学』、『高校生のためのゲームで考える人工知能』(三宅氏との共著)など。

──山本さんは政府のAI人材育成戦略をどう受け止めましたか。

明治以来、日本の教育は変わっていないな、という印象を受けました。何かお手本となるものをこれと定めると、それに向けて最適化を目指す。これはいわば部分最適です。短期的には効果をあげるかもしれないけれど、結果として全体最適の観点を疎かにするので、潮流が変わったとき、またやり直さねばならなくなる。言い換えれば、土台となるハードウェアを変えず、その上で動くソフトウェアの入れ替えだけでなんとかしよう、という場当たり的な発想に見えます。

幕末から明治にかけて、日本はヨーロッパを中心とする海外から学術を輸入しました。幕末に盛んになった蘭学は、オランダ語経由で、医学、兵学、それを学ぶのに必要な語学を中心とした実用本位の学術輸入でした。維新後は…

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