AI・人材投資だけではエンゲージメントは上がらない 全国1万人調査、16業種クラスター分析で見えた組織課題

株式会社アジャイルHRは、株式会社インテージと共同開発し、東京大学と共同研究を行った「A&Iエンゲージメント標準調査」に基づき、2026年版第4回全国1万人従業員エンゲージメント調査の追加分析レポートを公開した。調査は2026年3月16日から3月23日までの期間、全国の15歳から79歳の男女10,576人を対象に実施されている。追加設問として、発言のしやすさ(心理的安全性)、キャリア展望、人材投資への経営陣の関与、AIツール活用機会の4点に焦点を当てて分析を行った。

従業員エンゲージメント調査の分析結果

4つの要素すべてがエンゲージメントと強い相関

個人レベルの回答を分析した結果、4つの要素すべてが従業員エンゲージメントと強い正の相関関係にあることが判明した。例えば、発言のしやすさに肯定的な層のエンゲージメント平均値が3.45であるのに対し、否定的な層は1.84に留まり、組織内の心理的安全性が個人のエンゲージメントに及ぼす影響の大きさが浮き彫りとなっている。

しかし、業種別に平均値を算出すると異なる傾向が現れた。発言のしやすさとキャリア展望については、個社ごとの組織マネジメントや組織風土に依存するため、業種別でもエンゲージメントとの相関が維持されている。これに対して、人材投資やAI活用機会に関しては業種特性による構造的な違いが大きく、業種別の平均値とエンゲージメントの間に明確な相関は見られなかった。

情報通信業のように人材投資やAI活用機会が全業種でトップであっても、個人の関心が組織ではなく自身の成長へ向きやすいためにエンゲージメントが高まりにくい例や、農業・林業・漁業等の現場中心でAI活用機会が低いものの、社会貢献度や成果を実感しやすいためにエンゲージメントが高くなる例が存在し、全体として相関関係が相殺されている。

16業種を3つのクラスターに分類

これらの指標を用いたクラスター分析により、16の業種は3つのグループに分類された。学術研究や教育、不動産、農業などが属するクラスター1は、発言のしやすさ、キャリア展望、エンゲージメントがいずれも最も高いグループであり、土台となる組織風土が備わっているため、さらなる人材・AI投資の促進によりエンゲージメントをより高められる可能性があるとされる。

業種別クラスター分析

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情報通信、金融・保険、公務が該当するクラスター2は、人材・AIへの投資が全クラスター中で最も高い一方でエンゲージメントを含む他指標が中程度に留まっており、先行する投資に見合った組織マネジメントの質の向上が課題となる。

製造、運輸、小売、宿泊・飲食などが含まれるクラスター3はすべての指標が最も低く、人材投資・AI投資と組織マネジメントの質的向上を組み合わせることで、労働力不足の中で業務負荷を軽減しながら、従業員が発言しやすくキャリア展望を持てる状態を目指す必要があるとされる。

今回の追加分析により、人的資本経営を推進する上で、単にAIや人材への投資額を増やすだけではエンゲージメント向上には直結せず、クラスター(業種群)ごとの特性に応じた組織マネジメントの質的向上が不可欠であることが示された。