松本文部科学大臣、著作権法改正案の閣議決定報告 「レコード演奏・伝達権」を創設へ
松本洋平文部科学大臣は令和8年5月15日の記者会見で、同日の閣議で決定した著作権法の一部を改正する法律案について報告した。商業用レコードがレストランのBGMなどで利用された際に、実演家やレコード製作者が対価を求めることができる「レコード演奏・伝達権」を創設するもので、今国会での速やかな成立を目指す方針を示した。会見ではこのほか、横浜市における日本語教育拠点の視察、高校教育改革促進基金の第2回採択結果、東京都町田市の虐待事案、磐越自動車道のバス事故を踏まえた学校安全対策、経団連の科学技術立国戦略提言などについて言及した。
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著作権法改正案を閣議決定、「レコード演奏・伝達権」創設へ
冒頭、松本大臣は同日の閣議で著作権法の一部を改正する法律案が閣議決定されたことを報告した。本法律案は、音楽CDや配信音源などの商業用レコードがレストランのBGMなど公の場で利用された場合に、アーティストなどの実演家やレコード製作者が対価を求めることができる権利、いわゆる「レコード演奏・伝達権」を創設するものである。
この権利は国際条約に位置づけられて広く海外で導入されているが、日本においては未導入であった。そのため、日本の実演家などの商業用レコードが諸外国で公に利用された場合であっても、相互主義により適切な対価を得ることができないという課題が生じていたという。松本大臣は「アーティストなどへの望ましい対価還元を図り、我が国の音楽やアーティストの海外展開の一層の促進を図っていきたい」と述べ、今後、国会審議を通じて本制度改正の趣旨や必要性を丁寧に説明し、速やかな成立を目指す考えを示した。
横浜市の日本語教育・支援拠点を視察
松本大臣は、5月13日に横浜市内の地域の日本語教室、横浜市立港中学校、および日本語支援拠点施設「ひまわり」を視察したことを報告した。
地域の日本語教室では、ボランティアと外国人受講者が一体となって行われている日本語教育の様子を、港中学校およびひまわりでは、外国人児童生徒などへの日本語と教科の指導の様子、プレクラスによる初期日本語指導の様子をそれぞれ視察。関係者との意見交換も行い、日本語教育の重要性と必要性の高まりを改めて認識したという。文部科学省としては、今回の視察も踏まえ、引き続き地域日本語教育の体制整備や、外国人児童生徒などへの教育体制の強化に取り組んでいく方針である。
高校教育改革促進基金、第2回採択で富山・静岡の6拠点を決定
松本大臣は、高等学校等教育改革促進基金(通称:高校教育改革促進基金)の第2回申請に対する採択結果を発表した。本年3月末を申請期限としていた第2回公募では、富山県と静岡県の2県から合計8つの改革先導拠点の申請があり、外部有識者による審査を経て、富山県2拠点、静岡県4拠点が採択された。
採択された拠点については、地場産業の強みを活かした取り組み、大学・産業界などとの具体的な連携方策、生徒の具体的な学習希望に基づく地域性を活かした支援の構築方策といった点が評価されたという。松本大臣は「採択された改革先導拠点は、高校改革の実現に向けたパイロットケースとして選ばれたもの。それぞれの県で高校を進化させる一歩となる」と評価した。
なお、今回採択に至らなかった申請に対しては、文部科学省から改善を要する点などについて県へ丁寧に説明を行うとし、今後追加募集として採択に至らなかった計画などの提案を受け付けることを検討中であることも明らかにした。
町田市の虐待事案「捜査の状況を見守りつつ、今後の対応を検討」
東京都町田市で中学校3年生の生徒が家族により監禁され、その家族が逮捕された事件について問われた松本大臣は、現在警察において捜査が行われていることから、現時点で具体の見解を述べることは差し控えるとした。
その上で一般論として、「学校教職員は虐待を発見しやすい立場にあることを自覚した上で虐待の早期発見に努めなければならず、日常的な観察や健康診断、家庭訪問などを通じて虐待の兆候を把握する必要がある」と述べた。文部科学省ではこれまでも、「学校・教育委員会における虐待対応の手引き」や「学校現場における虐待防止に関する研修教材」を作成し、全国の教育委員会などに周知するとともに、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの配置による教育相談体制の充実にも取り組んでいる。
松本大臣は「本事案について注視を続けるとともに、こども家庭庁をはじめとする関係省庁とも連携しながら、虐待の防止、早期発見、早期対応に向けた取り組みを進めていく」とし、まずは捜査の状況を見守りながら、その内容を真摯に受け止め、今後の対応を検討する考えを示した。
「学校活動安全確保対策推進本部」、事務次官をヘッドに省内検討を開始
学校活動安全確保対策推進本部では、局長級の職員を集めて松本大臣が指示を出すとともに、意見交換を行ったという。児童生徒の安全確保について一体的な取り組みとなるよう、部局を超えて情報共有や政策連携などを図りつつ検討を深めることが趣旨で、個別の対応策については適宜公表していく。この大臣指示を受け、事務次官をヘッドとした検討の場となる協議体を設け、文部科学省として一丸となって検討を進めている。
危機管理マニュアル、ほぼ全校で作成済み 校外活動の安全確保へ点検要請
学校保健安全法に基づき、各学校に作成が義務づけられている危機管理マニュアルの作成状況やその内容については、学校設置者が確認し、改善の必要がある場合には適切に指導助言を行うこととなっている。文部科学省の「学校安全の推進に関する計画に係る取り組み状況調査」では、直近の令和6年度に令和5年度実績を調査したところ、危機管理マニュアルはほぼ全ての学校で作成されていることが確認されている。
さらに、前月に発出した通知でも、特に校外活動における事前の安全確保の徹底の観点から、学校の設置者に対して各学校における危機管理マニュアルの点検と必要な改定などを求めた。松本大臣は「学校における安全確保のためには、それぞれの学校における状況を踏まえた主体的な検討や取り組みが重要」と述べ、文部科学省として各学校における危機管理マニュアル作成に向けたガイドラインなどの支援を行っていることを説明。事務次官をヘッドとする省内検討をしっかりと行った上で、必要な対応を取っていく考えを示した。
部活動の移動「安全より費用が優先されることはあってはならない」
部活動の遠征中に発生した磐越自動車道のバス事故を踏まえ、部活動における生徒の移動への予算措置について問われた松本大臣は、移動の距離や乗車人数、各地域の公共交通の状況など多様な実態があり、それに応じて様々な移動手段が用いられていることに言及した上で、「前提として、安全より費用が優先されるようなことは決してあってはならない。どのような形態での移動であっても事故防止などに万全の措置を講ずることが必要」と強調した。
文部科学省としては、今般の磐越道でのバス事故を受け、関係省庁とも連携を図りながら、地域の実情なども踏まえつつ、学校外における児童生徒の活動の安全確保に向けた配慮留意事項について周知に努めていくとした。
自治体の安全運転講習の横展開「省内検討の上、必要な対応を判断」
自治体によっては、部活動の引率業務で運転を行う教職員に対して、安全運転に関する講習の受講を毎年課す取り組みを行っている事例もある。これらの取り組みを全国に広げる考えについて問われた松本大臣は、文部科学省ではこれまでもガイドラインなどで安全確保に向けて示してきたとした上で、現在、事務次官をトップに省内で検討を進めていることを改めて説明。その検討を進めながら、必要な対応を取っていく考えを示した。
経団連「科学技術立国戦略」提言「目指す方向と軌を一にする」
日本経済団体連合会(経団連)が「科学技術立国戦略」と題した提言を発表し、5月13日に高市総理へ手交した。提言には、2040年までに官民の研究開発投資を対GDP比5%、年間投資額50兆円へと引き上げることや、研究者・技術者などの価値創造人材の厚みと多様性を拡大すること、時代に合わせた大学、国立研究開発法人、政策推進体制の改革を通じて研究力強化から社会実装加速を図るための制度基盤を再構築することなどが盛り込まれている。
松本大臣は「こうした提言は、我々が目指している方向と軌を一にするものであり、大変心強く感じている」と評価。提言にある「科学技術省」の創設など行政組織のあり方については、政府全体の中で議論されるべきものとして文部科学大臣としての個別具体的なコメントは差し控えるとした上で、「文部科学省としては、先般閣議決定された第7期科学技術・イノベーション基本計画を踏まえ、関係機関と連携して研究力の抜本的強化などに全力を尽くしていく」と述べた。
レコード演奏・伝達権の法整備長期化と事業者の意見「指定団体での協議経て検討」
レコード演奏・伝達権の整備に長い時間を要したこと、また飲食店などの事業者団体からの懸念や反対意見について問われた松本大臣は、まず未整備であったことについて、「昭和45年(1970年)に我が国が現在の著作権法を全面改正した際に、レコード演奏・伝達権を定めるかどうかが議論されたが、当時の国際状況や利用の実態などから、将来の国際的な動向の進展も踏まえて再検討することが適当とされてきた」と経緯を説明。今般、これらの状況に変化が生じたことや、海外では多くの国々が導入していること、日本の音楽やアーティストの海外展開の促進、実演家などへの対価還元の促進といった観点を踏まえ、文化審議会著作権分科会で審議が行われ、その報告を踏まえて今国会への法案提出に至ったとした。
飲食店などの団体も含めた様々な団体からは、文化審議会著作権分科会でヒアリングを実施。権利の導入に賛成する意見のほか、趣旨は理解するものの、金額や徴収への負担に配慮を求める意見も寄せられているという。二次使用料の額などについては、本法律案の成立後、指定団体において具体的に検討し、利用者側との協議などを経ることとなる。その際には、権利者側において利用者の意見を丁寧に聞くとともに、小規模事業者の負担にも配慮することなどを盛り込んだ文化審議会の報告書を踏まえて検討する必要があるとし、松本大臣は「文部科学省・文化庁としても、法案が国会で認められればという前提ではあるが、しっかりと注視していく」と述べた。