【7月31日松本洋平文科大臣会見詳報】iPS細胞、山中教授の発表から20年で「薬」に
2006年に山中伸弥・京都大学教授がiPS細胞の作製を発表してから、まもなく20年の節目を迎える。今年3月6日、クオリプス株式会社が開発した重症心不全治療用の心筋細胞シート「リハート」と、住友ファーマ株式会社と株式会社RACTHERAが共同開発したパーキンソン病治療用のドパミン神経前駆細胞「アムシェプリ」(一般名:ラグネプロセル)の2製品が、条件・期限付きで厚生労働省から製造販売承認を受けた。iPS細胞を用いた製品の実用化としては世界初となる。2026年7月31日の閣議後記者会見で、この話題について問われた文部科学省の松本洋平文部科学大臣は、基礎研究が実際の治療へとつながった意義を強調した。
iPS細胞治療、世界初承認の先に
松本大臣は、今後はiPS細胞の高度化に関する研究開発や、臨床応用を担う人材の育成に一段と力を入れる必要があると述べ、日本成長戦略の戦略分野に位置づけられる創薬・先端医療の実現に向け、関係省庁と連携して支援を続ける方針を示した。基礎研究の成果が20年をかけて世界初の治療製品として結実したことは、今後の研究支援のあり方を占ううえでも象徴的な出来事といえる。
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この日の会見では、iPS細胞のほかにも複数の重要な発表があった。
熊本地震対応、支援を継続
2026年7月28日16時27分、熊本県熊本地方を震源とするマグニチュード7.1(暫定値)の地震が発生し、熊本県で最大震度7を観測した。文部科学省は発生直後に「災害情報連絡室」を設置し、同日18時には「災害応急対策本部」(本部長:大臣官房長)、さらに同日20時50分には「非常災害対策本部」(本部長:事務次官)へと、その日のうちに二段階で体制を引き上げた。被災地の状況を把握するため、7月28日から職員2名を熊本県に派遣したほか、29日からは学校施設の安全性を確認する応急危険度判定士1班3名も派遣している。
文部科学大臣が本部長を務める地震調査研究推進本部は、7月29日に地震調査委員会の臨時会を開き、今回の地震活動の評価をまとめた。あわせて同日、避難所となっている学校施設について、熱中症対策の観点から空調設備の整った普通教室などを活用するよう、また被災地域の児童生徒の安全を確保するよう、教育委員会などに通知している。
幹部人事、矢野和彦氏が次官に
31日の閣議では、8月6日付の幹部人事も承認された。退任する増子宏文部科学事務次官の後任には、矢野和彦文部科学審議官を起用する。矢野氏は徳島県出身で、青山学院大学法学部を卒業した1989年に旧文部省へ入省し、2024年7月から文部科学審議官を務めてきた。矢野氏の後任の文部科学審議官には望月禎初等中等教育局長を充て、初等中等教育局長には茂里毅大臣官房長が就く。
松本大臣は増子氏について、「高等学校等就学支援金の支給に関する法律の一部を改正する法律案」をはじめとする4法案の成立や、「高校から大学・大学院等を通した人材育成システム改革ビジョン」の取りまとめなど、文部科学行政の推進に力を尽くしてきたと述べ、謝意を示した。そのうえで新体制には、成長戦略17分野への重点支援や高校・高等教育の一体的改革、研究力強化、第4期スポーツ基本計画の策定、アニメや漫画、ゲームといった日本発コンテンツの海外展開など、重要課題への着実な取り組みを期待すると語った。
EPOCH、19件180機関採択
第7期科学技術・イノベーション基本計画を踏まえて新設された「先端研究基盤刷新事業(EPOCH)」は、3月31日に公募を始め、5月20日の締め切りを経て審査が行われ、この日、結果が公表された。全国の国公私立大学68校と国立高専51校を含む180機関以上が参画する19件の提案が採択され、提案内容に応じて最大30億円(当初3年分)が支援される。事業期間は10年間の予定で、若手を含む研究者が挑戦しやすい研究環境の整備につながることが期待されている。
京大、卓越研究大学に3校目認定
大学の研究力強化を後押しする国際卓越研究大学制度で、松本大臣は京都大学を新たに認定したと明らかにした。認定は東北大学、東京科学大学に続き3校目となる。有識者会議(アドバイザリーボード)は7月3日、京都大学の体制強化計画案が認定・認可の水準を満たし得ると判断し、総合科学技術・イノベーション会議と科学技術・学術審議会への意見聴取を経て、正式な認定に至った。京都大学には2026年度分として約200億円の助成が見込まれている。松本大臣は、京都大学から今後提出される体制強化計画の認可を経て、8月中の支援開始を目指す考えを示した。
避難所の体育館空調、なお3割
記者からは、避難所に指定される学校体育館の空調整備について質問が出た。文部科学省の調査によると、災害時の避難所に指定されている公立小中学校の体育館や武道場の空調設置率は、5月1日時点で全国平均33.1%となり、前年度の23.7%から9.4ポイント上昇した。一方で、普通教室の設置率が99.6%にほぼ達しているのと比べると、依然として低い水準にとどまっている。設置率には自治体間で大きな差があり、東京都のように9割を超える自治体がある一方、1%に満たない県も残っている。
政府は2035年度までに、避難所となる体育館等の空調設置率を100%とする目標を掲げている。松本大臣は、近年の猛暑や自然災害の激甚化・頻発化を踏まえ、体育館への空調整備を喫緊の課題だと位置づけた。そのうえで、国庫補助率の引き上げ(2分の1)や補助単価・上限額の見直しを通じて自治体の整備を後押しする考えを示すとともに、今回の熊本地震への対応では、空調が完備された普通教室などを避難所として活用するよう関係自治体に働きかけていると説明した。
私学の管理体制、遺族会見受け
最後に取り上げられたのが、私立学校の管理体制をめぐる質疑だ。沖縄県名護市の辺野古沖では3月16日、修学旅行中だった同志社国際高等学校(京都府京田辺市)の生徒らが乗った小型船2隻が転覆し、同校2年の武石知華さん(当時17)と船長の金井創さん(当時71)が死亡、生徒12人と乗組員2人の計14人が負傷した。7月30日には武石さんの両親が東京都内で事故後初めての記者会見を開き、学校長ら4人と船を運航していた団体の共同代表ら7人の計11人を業務上過失致死傷などの容疑で刑事告訴したことを明らかにした。告訴は7月13日に受理され、7月25日には同校への家宅捜索も行われている。
松本大臣は改めて犠牲者への哀悼の意を表したうえで、私立学校の安全確保を含む教育活動については、まず学校及び設置者である学校法人自身が責任を果たすことが重要だとの考えを示した。文部科学省としても、学校の設置者に対して計画の確認などを通じた重層的な体制づくりを求め、所管する都道府県にも私立学校への指導助言を要請してきたと説明した。今後は特別調査委員会の報告書なども踏まえながら、管理監督のあり方について検討を進めるとしている。
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