特集1 リスキリングで今、何を学ぶべきか
知識や技術の陳腐化のスピードも早まる中で、学び続けることが強く求められる時代となった。一方で「何を学んだらいいのかわからない」と頭を悩ませているビジネスパーソンも多いだろう。本特集では「何を学ぶべきか」をテーマに様々な角度から検証した。(編集部)
リスキリングの第一歩となる
キャリアの羅針盤
平均寿命の延伸に伴い「人生100年時代」の到来と言われて久しい。また、先行き不透明で予測困難な「VUCAの時代」、知識や技術の陳腐化のスピードも早まる中で、大学を卒業した後も、学び続けることが強く求められる時代となった。
一方、社会が複雑多様化する中で、「何を学んだらいいのかわからない」と頭を悩ませているビジネスパーソンも多いだろう。また、コロナ禍などをきっかけにオンラインやアプリを使った多種多様な教育サービスが氾濫する中で、「どうやって学んだらいいのかわからない」と、リスキリングの一歩を踏み出せないビジネスパーソンも少なくないだろう。
ローンディールWILL-ACTIOIN Lab.所長を務める大川陽介氏は、「正解のない時代、先の見えない人生を自分らしく歩むためには、キャリアの羅針盤となる『WILL(意志)』が不可欠です」と話す(➡こちらの記事)。
大川氏は、自分の意志を言語化し、具体的な行動に移す。行動してみて、自分の意志を再び言語化するサイクルを「Will-Action Cycle」と呼ぶ。大川氏には、WILLを発掘するうえでの重要なポイントや「Will-Action Cycle」において何が重要なのかなどについて話を伺った。
「専門性」や「汎用性」から見る
いま必要なリスキリングとは?
将来のキャリアを見据えてリスキリングを始める時、多くのビジネスパーソンは「専門性」を身に付けたいと考えるはずだ。一方で、ChatGPTのような生成AIをはじめとするテクノロジーの発達により、タスクの代替が進む中で、そもそも身につけるべき「専門性」とは何だろうか?と疑問を感じる時代となった。『替えがきかない人材になるための専門性の身につけ方』の著者で、青山学院大学等で講師を務める電通部長の国分峰樹氏に、「専門性とは何か」「専門性を身につけるために大切なこと」などについて寄稿いただいた(➡こちらの記事)。
専門性に続いて、リスキリングの目的として「資格」取得を挙げる人も多いだろう。一方で、単に「資格」を取得しただけで、キャリアアップに繋がるのだろうか。
「ホワイトカラーのキャリア形成」や「職業資格」について研究している法政大学キャリアデザイン学部教授の佐藤厚氏は、「現状では、日本における職業資格の評価は『低い』と言えます」と指摘する(➡こちらの記事)。佐藤氏には、日本における職業資格の位置づけなどについて話を伺った。
専門性や職業資格とは対照的に汎用的な能力を身につけたいと考えた時に、注目を集めているのが「哲学思考」だ。哲学思考とは、「問い」によって間接的に問題の核心に迫っていく思考方法だ。そして、哲学対話とは、他者との対話を通じて哲学思考を深めていく手法である。社員研修として行う哲学対話では、哲学思考を身につけることが目的の一つになっている。
企業への哲学コンサルティングや教育機関における哲学対話など、多様な哲学プラクティスを実践する東京大学共生のための国際哲学研究センター特任研究員の堀越耀介氏には、哲学思考の重要な要素や哲学対話を深めるための方法などについて話を伺った(➡こちらの記事)。
また、汎用的なスキルは「ポータブルスキル」とも呼ばれる。「ポータブルスキルとキャリア形成」をテーマに研究に取り組むビータップ代表取締役の柳瀬浩之氏によると、ポータブルスキルとは、「特定の業種や職種、時代背景にとらわれることのない汎用性の高いスキルであり、例えば論理的思考力や計画策定力、コミュニケーションスキル、主体性や不屈性などが挙げられます」と話す(➡こちらの記事)。柳瀬氏には、キャリア自律の実現に、ポータブルスキルの習得・活用はどんな意義があるのかなどについて話を伺った。
オンラインでの学びが浸透する中で、オンラインでのリスキリングを始めたものの、時間の確保やモチベーション維持が難しく、挫折した人も多いだろう。そのような中、有料会員の1年以上の継続率が80%を超える経営学のオンライン教育サービス「やさしいビジネススクール」が注目を集めている。大学教授や実務エキスパートを講師に招き、対話型の講義、一人ひとりに合ったカリキュラム提案などの仕掛けにより、高い継続率と確かなスキルアップを実現している。こうした学びの特長などについて、やさしいビジネススクール学長の中川功一氏に話を伺った(➡こちらの記事)。
学びの目的が明確でないものの、「何か学んでみたい」というビジネスパーソンであれば、いっそプロボノに参加してみるのも一つだ。プロボノは、身につけたスキルや経験をNPO法人などでの社会課題解決に役立てる社会貢献活動だ。社会貢献活動である一方で、プロボノワーカー自身が得られる学びもある。プロボノの草分けとして活動している認定NPO法人サービスグラント代表理事の嵯峨生馬氏に取り組みやプロボノの意義など伺った(➡こちらの記事)。
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リスキリングに必要な
スキルの可視化をどう実現するか
何を学ぶべきかを考えた際に、自分がもつスキルや求められるスキルが可視化され「共通言語」となっていれば、ビジネスパーソンのリスキリングを後押しすることもできる。三菱総合研究所政策・経済センター主任研究員の大内久幸氏には、各種人事施策を働き手のスキルに基づいて実施する「スキルベース組織」とは何か。そして共通言語としてのスキル体系が整備され、個人にも活用可能になるとどのような社会が実現するのかなどについて寄稿いただいた(➡こちらの記事)。さらに、スキルの可視化を考える際、具体的にどうやってスキルの可視化をすればよいのか。その具体的な手段として活用が期待されるのがスキルの可視化テクノロジーだ(➡こちらの記事)。
リクルートワークス研究所アソシエイトの石川ルチア氏によると、「スキルの可視化が一般化している海外のツールの中でも、特に高度な自動化が進んでいるものには、『Eightfold』『Degreed』『Reejig』などがある」という。石川氏には「Reejig」の仕組みの解説や企業がスキルの可視化テクノロジーを導入する際の留意点などについて寄稿いただいた。
本特集では「何を学ぶべきか」をテーマに、様々な角度から検証した。リスキリングを考えているビジネスパーソンや社員のリスキリングを後押ししたい企業にとって参考となれば幸いだ。