「職業資格の取得」はキャリアアップにつながるのか

ビジネスパーソンが職業資格を取得する目的は「収入の増大」や「生活の安定」、「独立」への期待などが挙げられる。しかし職業資格の取得は、本当にキャリアアップにつながるのか。「ホワイトカラーのキャリア形成」や「職業資格」について研究する法政大学、佐藤厚教授に話を聞いた。

日本では職業資格の
取得効果は限定的

佐藤 厚

佐藤 厚

法政大学 キャリアデザイン学部
キャリアデザイン学科 教授
1957年生まれ 2002法政大学大学院博士課程修了(社会学博士)。1991年労働政策研究・研修機構研究員、2004年同志社大学大学院総合政策研究科教授。2008年より法政大学キャリアデザイン学部教授。2020~21年、キャリアデザイン学部長。The University of Manchester Alliance Manchester Business School Visiting Academic(2016~17年)。厚生労働省労働政策審議会公益委員(2021年~)。労働政策研究会議(JIRRA)会長(2022年~)。『日本の人材育成とキャリア形成:日英独比較』中央経済社(2022年)。「日本の能力開発とキャリア形成の特徴と課題」『日本労働研究雑誌』(2024,No.763)。

── 日本における職業資格の位置づけについて、どのように見ていますか。

職業資格の種類は多種多様ですが、ここでは「名称独占資格」(調理師、保育士、技術士、中小企業診断士など)を中心に、学位や訓練修了認定を含めて考えたいと思います。

現状では、日本における職業資格の評価は「低い」と言えます。日本では長年、職業教育訓練は企業内でのOJTが主流でした。職業資格を取得することは入口のミニマム要件であり、企業内における長い技能養成(昇進)プロセスの最初の一段階にすぎず、入社以降の仕事経験の中で「一人前になる」とされてきました。

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