自治体職員のエンゲージメント向上で休退職率抑制へ
株式会社リンクアンドモチベーションが、全国7自治体の職員19,641名を対象に実施した「自治体職員のエンゲージメントと退職率・休職率の関連性に関する調査(令和7年度)」の結果を発表した。近年、地方自治体では若手職員を中心とした離職や休職者の増加が組織運営における大きな課題となっている。
総務省の調査では地方公務員の受験者数が過去10年で約28%減少しているほか、一般行政職の退職者数も増加傾向にあり、民間企業への人材流出による人材不足が懸念される。また、長期病休者の増加に伴う手当支給などの財政負担も深刻であり、職員のエンゲージメント向上による対策が急務となっていた。今回の調査分析により、職員のエンゲージメント(組織への愛着や貢献意欲)が高い組織群ほど、退職率と休職率を合わせた「休退職率」が低くなる傾向が、約2万人のデータ分析によって裏付けられた。
画像はタップ、クリックすると拡大します
具体的な調査結果として、エンゲージメントスコアが60以上の「高エンゲージメント組織群」における休退職率は1.95%であった。これに対してスコア40未満の「低エンゲージメント組織群」では休退職率が4.54%に達し、2.59ポイントの格差が生じている。さらに、低エンゲージメント組織では休職率が退職率を上回る一方、スコア45以上の組織では退職率の方が高くなるという特徴も判明した。組織の状態に応じた要因分析では、全水準に共通する強みとして、上司による部下理解や適切な支援・評価といった「上司行動」に関する項目の満足度が高かった。
一方で、人員、設備、処遇といった「リソース」に関する項目は、高エンゲージメント組織であっても満足度が低く、自治体全体の共通課題であることが示されている。組織改善のポイントとして、低エンゲージメント層から中位層へ改善する段階では「職場内の良好な関係」や「上司-部下の意思疎通」が鍵となる。また、中位層から高エンゲージメント層へ引き上げる段階では「将来像の共有」や「変革意志・行動の実現」が分水嶺になる。
今回の発表では、職員数3,000人規模の自治体がエンゲージメントスコアを低位(40-45)から高位(55-60)へと改善した場合の投資対効果(ROI)も試算された。これにより、年間で約1億円の人的損耗コストの削減が見込まれ、5年間の累計投資額(約1.5億円)を約1年半で回収できる計算となるため、組織エンゲージメントへの投資は将来の財政損失を防ぐ合理的な判断であるとしている。
同社の行政機関向け事業責任者である依光宏太氏は、今回の調査によってエンゲージメント向上が人材定着と休職リスク抑制の双方に寄与することが定量的に証明されたと言及した。現場の活動を伴わない一過性の調査は組織への不信感を助長しかねないため、同社では現状把握だけでなく持続的な実行支援を注力している。実際に3年以上継続している自治体では、初回平均スコアの44.1(CCランク)から最新調査で51.0(Bランク)へ向上し、若手職員の退職数が減少するなどの成果が出ているという。