教員がAIに答え特別支援教育の計画書を自動生成 クラウドシステム「すくすく」
福岡市中央区に本社を置く相思創造研究所株式会社(代表取締役・杉森由政氏)は2026年8月5日、特別支援教育向け統合支援クラウドシステム「すくすく」において、個別の教育支援計画と個別の指導計画の作成をAIとの対話で支援する新機能の提供を開始したと発表した。教員がAIの質問にチャット形式で答えるとドラフトが自動生成され、内容を確認・修正したうえで確定する仕組みだ。
個別の教育支援計画は発達障害者支援法第8条および学校教育法施行規則、個別の指導計画は特別支援学校学習指導要領に基づき作成が義務付けられている書類である。同社が2026年5月に実施した実機トライアルの教員ヒアリングでは、数十項目にわたる入力に1件あたり60分から120分を要しているとの声のほか、前年度・前学期の内容をそのまま流用する「前年コピペ」の常態化や、前学期の評価結果が次期の計画に引き継がれない課題も挙がった。こうした声を踏まえ、同社は入力作業を対話に置き換える機能を開発した。
計画書一覧画面から「AIと一緒に作成する」を選ぶとチャット画面が開き、AIの質問に答える形で情報を集めていく。対話は自動保存され、途中で中断しても次回ログイン時に再開できる。
質問は雑談ではなく、制度と国際生活機能分類(ICF、心身の状態や社会参加の状況を分類する世界保健機関の国際基準)の枠組みに沿って段階的に設計されている。個別の教育支援計画では本人・保護者の願いを起点に実態把握や関係機関連携、長期目標へと問いを重ね、個別の指導計画では前学期からの引き継ぎを踏まえて自立活動6区分27項目から中心課題を選び、上位計画との整合を確認しながら短期目標を設定する。個別の指導計画を作成する際には、上位計画の年度重点目標と前学期の評価結果を自動的に引き継ぎ、確定後の内容が上位計画の見直しにも反映される仕組みとして、年度を通じたPDCAサイクルを支える。
入力方法も広げ、音声のリアルタイム書き起こしに加え、児童生徒の様子を撮影した写真や動画、音声ファイルを対話に添付できるようにした。計画書は公的な文書であるため最終判断は教員が担う設計とし、AIが生成した箇所は視覚的に区別して表示、「AI生成内容を確認しました」というチェックを入れなければ確定できない仕様とした。AIが参照した情報も画面上に開示し、原文と編集差分は監査ログとして保持する。
セキュリティ面では、文部科学省の教育情報セキュリティポリシーに関するガイドラインへの準拠、TLS 1.3による通信の暗号化、データベースのフィールドレベル暗号化など既存の水準を維持し、AIに送信する情報は在籍するテナント内に限定する。
同社の試算では、1件あたり60分から120分を要していた作成時間を、対話10分から20分に確認・修正の10分程度を加えた25分から45分程度まで縮められる見込みだという。ただし、この数値は同社が掲げる設計目標であり、効果を保証するものではないとしている。
代表取締役の杉森由政氏は、目指したのは「AIが計画書を書いてくれる」仕組みではないと述べた。計画書は児童生徒をどう理解し、どう育てたいかという教員の専門的な判断そのものであり、AIが担うべき役割はその判断を引き出す問いと書き起こしの手間だとの考えを示した。前年度の内容を流用するのではなく現在の児童生徒の状態を起点にした計画書になり、前学期の振り返りが次の学期に自然につながるとしたうえで、最終的な責任を持つのはあくまで教員だという前提を崩さない設計を貫いたとしている。
「すくすく」は特別支援教育における情報の分断を防ぎ、児童生徒の個性を継続的に支援するクラウドサービスで、特別支援学校に加えて特別支援学級や通級指導教室にも対応する。個性プロフィールや記録補助・タグ付け機能、保護者向けスマートフォンアプリ、GIGAスクール対応端末での利用などを備えている。