【8月4日松本洋平文科大臣会見詳報】SNS長時間利用でテスト正答率低下、ICT積極利用は好影響

松本洋平文部科学大臣は2026年8月4日、閣議後の記者会見で冒頭4件を報告した。柱となったのは令和8年熊本地震への対応状況と、8月3日に公表した令和8年度全国学力・学習状況調査の分析結果である。

Photo by hamazou/ Adobe Stock

質疑では、沖縄県名護市の辺野古沖で起きた高校生の転覆死亡事故を巡る第三者委員会の報告書への受け止めのほか、研究基金の運用ルール見直しやエジプトとの教育協力についても質問が及んだ。

熊本地震 学校524件が被害

気象庁は2026年7月28日に熊本県熊本地方で発生したマグニチュード7.1、最大震度7の地震を「令和8年熊本地震」と命名した。松本大臣は冒頭、被災した人々への見舞いを述べたうえで、文部科学省が所管する分野の被害状況を説明した。8月3日午前11時時点で、学校の管理下における人的被害は児童生徒25人、教職員10人の負傷にのぼる。物的被害は学校施設524件、社会教育施設等130件、文化財53件が確認されており、柱や壁の損傷、ひび割れなどが目立つ。

対応としては、被災地に教職員等を派遣する枠組みである「被災地学び支援派遣等枠組み(D-EST)」に基づき、局長級職員を含む3人を熊本県へ送った。あわせて、被災した学校施設の使用可否を見極める応急危険度判定士も派遣し、避難所となっている学校については熱中症対策として空調設備のある教室を活用するよう教育委員会等へ通知した。文化財の被害確認に向けては専門職員の派遣も始めており、8月3日には熊本市に4人を送り込んだ。

インターハイ開会式に出席

松本大臣は8月3日、滋賀県大津市の滋賀ダイハツアリーナで開かれた令和8年度全国高等学校総合体育大会(インターハイ)の総合開会式に出席し、選手たちへ祝辞を述べた。あわせて陸上競技会場を視察し、今大会から熱中症対策として導入された17時以降の夜間開催の様子を確認している。選手からは夜間開催を歓迎する声が多いといい、大臣は主催団体の日本陸上競技連盟に対し、良かった点と課題の両方を整理して今後へ生かすよう求めた。被災地・熊本からの選手が出場していたことにも触れ、高校生のスポーツ活動を引き続き後押しする方針を示した。

学力調査 SNSと成績に相関

令和8年度全国学力・学習状況調査は、7月16日に正答率等の速報値、8月3日に質問調査を踏まえた分析結果という二段階で公表された。速報値によると、平均正答率は小学校の国語が61.1%、算数が56.6%、中学校は国語が64.2%、数学が57.4%だった。3年ぶりに実施された中学校の英語は、聞くこと・読むことなど4技能をコンピューターで測定するCBT方式で行われ、基準値500のIRTスコアで499点となった。

8月3日の分析結果では、中学校英語について、日常的な話題を聞き取る力や読み取る力には成果が見られた一方、自分の考えを述べる際に理由を示す点には課題が残ったとされた。質問調査では、主体的・対話的で深い学びに取り組んだと答えた児童生徒が全体の約7〜8割にのぼり、こうした児童生徒ほど各教科の正答率が高くなる傾向が改めて確認された一方、SNSや動画視聴の時間が長い児童生徒ほど正答率が低くなる傾向も引き続き見られた。松本大臣はこの結果を、学習指導要領の改定をはじめとする教育政策の見直しに生かしていく考えを示した。

学校安全へ有識者会議設置

学校安全を巡っては、8月6日に「学校安全の推進に関する有識者会議」の令和8年度第1回会合を開く予定だ。各学校の危機管理マニュアルをより実効性の高いものへ改定するための議論を進める。あわせて、8月に開催予定の中央教育審議会でも、国が定める次期・第4次の学校安全推進計画の策定に向けた諮問を行い、中期的な視点からの総合的な取り組みを検討していく。

辺野古事故は所感控える

質疑ではまず、沖縄県名護市の辺野古沖で2026年3月16日に発生した小型船転覆事故が取り上げられた。同志社国際高等学校(京都府京田辺市)の研修旅行中に起きたこの事故では、2年生の武石知華さん(17)と、乗っていた小型船「不屈」の船長の2人が死亡している。同校を運営する学校法人同志社が設置した特別調査委員会(委員長:渡辺徹弁護士、北浜法律事務所代表)は7月31日、安全管理体制の不備を事故の主因と認め、法人に安全配慮義務違反があったと結論づける報告書を公表した。

松本大臣は、報告書の内容自体へのコメントは立場上差し控えるとしつつ、関係者への聞き取りやアンケートを通じた検証が詳細かつ丁寧に行われたとの受け止めを示した。そのうえで、学校法人には指摘された事項を真摯に受け止め、速やかに再発防止策を検討してほしいと注文をつけた。文部科学省としても、同校の再発防止策の検討状況を注視しながら、私立学校を含む全ての学校を対象に、危機管理マニュアルの評価・見直しに関するガイドラインの改定を検討していく考えを明らかにした。

受動的SNS視聴と能動的ICT活用で明暗

学力調査を巡っては、SNSや動画視聴の影響に加え、児童生徒の学習時間が2021年度以降減少傾向にあることについても質問が出た。松本大臣は、児童生徒への質問調査で「ICT機器の活用に自信がある」と答えた層ほど、分からないことを自分なりに工夫して調べたり、話し合いを通じて考えを深めたり、資料や話の組み立てを工夫して発表したりしていると自己評価する傾向が強く、各教科の正答率・スコアも高い傾向にあったと説明した。なお、ICT機器を「ほぼ毎日」または「週3回以上」活用していると回答した学校は、小学校95.4%、中学校93.5%にのぼり、活用の定着がうかがえる。

そのうえで、ICTを受動的に使うだけでなく主体的・能動的に活用する力を育てることが学力向上につながるとの見方を示し、次期学習指導要領で情報活用能力の向上を重要な検討事項に位置づける方針を語った。関係省庁と連携した情報モラル教材の提供や、利用時間に関するルールづくりの推奨、保護者向け啓発シンポジウムの開催なども進めるという。学校内の取り組みだけでなく家庭でのルールづくりも重要だと指摘し、文部科学省だけで解決できる課題ではないため、政府全体で対策を考えていく必要性を強調した。

基金3年ルール撤廃に対応

政府は2026年7月21日に閣議決定した「骨太の方針2026」で、国の基金への予算措置を原則3年以内とするいわゆる「3年ルール」について、不適用を含む見直しを打ち出した。この点について記者から質問が及んだ。松本大臣は、研究の進捗や成果、状況の変化に応じた計画の見直しやきめ細かな資金配分を行ううえで、基金を活用した柔軟な資金管理や複数年度にわたる予算措置が有効だとの見解を述べた。そのうえで、内閣府をはじめとする関係府省と連携しながら、必要な概算要求を行うとともに、適切な予算の確保と執行に努めていく考えを語った。

エジプトと教育協力深化

会見の直前には、モハメド・アブデル・ラティーフ・エジプト教育・技術教育大臣が松本大臣を表敬訪問していた。この点を捉え、記者からは日本型教育の海外展開の今後を問う質問が出た。松本大臣は、掃除や日直、学級会、運動会・遠足といった日本式の学校生活の指導、いわゆる「特別活動(特活)」をエジプトの公立小学校に正式導入した「エジプト日本学校(EJS)」について説明した。EJSは2016年の日エジプト教育パートナーシップを土台に2018年に開校し、現在は69校まで拡大している。

松本大臣はこの広がりを共有したうえで、9月には元校長ら日本人スーパーバイザー39人を現地へ派遣する予定だと明らかにした。あわせて、ユネスコと連携してアフリカ諸国へ日本型教育を広げたいとの提案を受けており、前向きな協議ができたとの手応えを語った。国内における特別活動の在り方については、学習指導要領の改定に向けて専門家による検討が進行中であることを理由に、具体的な言及は控えている。


※このような政策動向・省庁会見の要点などを、毎日メールでまとめてお届けしています。▶無料メルマガ登録はこちら