平田オリザ氏が語る なぜ今、地方の大学で「芸術文化観光」を教えるのか

2021年4月、兵庫県・但馬地域の豊岡市で開学した芸術文化観光専門職大学。なぜ「芸術文化」と「観光」に特化した、新たな大学が設立されたのか。「観光とは究極のリベラルアーツ」と語る学長の平田オリザ氏に、目指す大学像や地域活性への展望について話を聞いた。

芸術文化と観光を結びつける
日本で初めての公立大学

平田 オリザ

平田 オリザ

芸術文化観光専門職大学 学長
劇作家・演出家・青年団主宰
1962年、東京生まれ。国際基督教大学在学中に劇団「青年団」結成。戯曲と演出を担当。自身が確立したワークショップ方法論は、2002年度から採用された国語教科書に掲載され、多くの子どもたちが教室で演劇を創る体験をしている。大阪大学COデザイン・センター特任教授、東京藝術大学COI研究推進機構 特任教授などを歴任。2019年に兵庫県豊岡市に移住。2021年から芸術文化観光専門職大学学長。豊岡演劇祭のフェスティバルディレクターも務める。

──芸術文化観光専門職大学の初代学長として、どのような大学を目指されていますか。

本学は、芸術文化と観光の双方の視点を活かした学びの場です。「なぜ芸術文化と観光なんですか?」とよく聞かれるのですが、コロナ禍以前の日本はインバウンドで潤ってきました。もちろん観光業界の努力もありますが、外的要因として円安と東アジアの経済発展が大きく影響しています。

今、中国と東南アジアに10億人近い中間層が生まれつつあります。だいたい年間所得が300~400万円を超えてくると、その国の人は海外旅行に行き始める。70~80年代の日本、90年代の韓国がそうでした。初めて海外旅行をするアジアの人たちが、行き先として日本を選んでくれた。ただし、富士山を何度も見たいという外国人旅行者はあまりいないでしょう。もう一度、日本に来てもらうにはコンテンツが重要になります。

地域の伝統や食、芸術やスポーツなどのコンテンツを使った観光を…

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