「博士人材増やすには」高校生が政策提言体験授業  

中外製薬株式会社とお茶の水女子大学附属高等学校(東京都文京区)は、同校の高校3年生120名を対象に、必履修科目「総合的な探究の時間」として「政策提言体験授業」を実施した。2026年7月2日、その第2回(最終回)となる授業が同校内にて実施され、生徒たちによる政策提言の発表が行われた。 

本取り組みは、社会課題を自分ごととして捉え、解決策を考える政策提言の授業を企業と学校が連携して実施する、全国的にも珍しい試みである。 

中外製薬の現役研究員が講義 

テーマは「日本で博士人材を増やすためにはどうすればよいか」。6月18日に開催された第1回授業では、博士号を持つ中外製薬の女性社員2名が講師として登壇。生徒たちは、博士人材を取り巻く現状を自分ごととして捉え、課題への理解を深めていた。 

背景には、日本財団の18歳意識調査の中で、「自分の行動で、国や社会を変えられると思う」と答えた日本の若者の割合は45.8%と、調査対象となった6カ国中で最も低い数値にとどまっていること(日本財団18歳意識調査結果 第62回テーマ「国や社会に対する意識(6カ国調査)」 | 日本財団)や、理系人材・博士人材が不足しているという現状(「深い学び」の実装及び高等教育との接続について)が挙げられる。 

7月2日の授業では、まず本授業を企画・立案した社員4名により、博士課程の課題と「提言、提案、要望の違い」についての説明が行われた後、グループごとに提言に向けた議論を展開した。その後、生徒から具体的な政策提言の発表が行われた。 

生徒たちは、前回までの学びやインターネット検索などを活用しながら、進学を阻む理由や、進学した際のデメリットなど、現状の課題をホワイトボードに書き出し、こうした課題を解消するための施策を考えるだけでなく、課題の原因となっている日本の社会構造や教育制度の問題等について、多角的な視点から議論を進めていた。 

具体的な提言としては、進路に大きな影響を与える「スーパーサイエンスハイスクール(SSH)」の指定校拡大や、専門分野の教授・企業人と触れ合える機会の創出、入試制度の改革の必要性などを訴えた。 

また、大学院進学における経済的ハードルを下げるための「返済不要の奨学金制度」の拡充、企業への「ジョブ型雇用」導入の補助金支給やガイドライン作成、博士採用企業へのインセンティブ付与など、国によるバックアップ体制を盛り込んだ具体的な案が提示された。 

社会課題を「自分ごと」に 若者の声社会に届ける 

発表を受け、中外製薬の社員からは「自分ごと化された素晴らしい提言」、「意欲的な人をさらに伸ばすというポジティブなアプローチが印象的でした」と、生徒たちの鋭い着眼点や熱量に対して高い評価とフィードバックが送られた。 

生徒たちの提言は「博士人材に関する産学協議会合」事務局に提出され、具体的な提言内容については、別途中外製薬が確認し、内容に応じた今後の活用方法を検討していくという。 

今回の政策提言体験授業プログラムは、お茶の水女子大学と附属高等学校、お茶の水女子大学理系女性育成啓発研究所、そして中外製薬の産学連携での取り組みとして、博士人材に関する産学協議会合で共有される。同会合は、経団連側企業の社長など8名、大学側学長7名の計15名の委員で構成され、博士人材の育成・活躍推進に向けて議論している。 

今回の授業のように、社会課題を「自分ごと」として捉え、自ら解決策を発信しようとする若者たちの声を、企業や国が真摯に聞き届けていくことが不可欠だ。そうした姿勢こそが、日本の若者たちの自己効力感を高め、主体的な社会参画を促す確かな原動力となる。