【文科省議事録詳報・後編】学芸員への「丸投げ」はNG 中教審WGが問う外部連携の設計図
前編に続き、中央教育審議会初等中等教育分科会の教育課程部会に置かれた社会・地理歴史・公民ワーキンググループの第7回会合(2026年4月24日)から、学校外の施設・人材との連携、そして評価の在り方をめぐる議論を報告する。
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学年が上がると減る「校外の学び」
続いての論点は、学校外の施設や人材との連携である。事務局は、博物館や資料館を活用した授業が学年の上昇とともに実施率を下げる傾向にあることや、地域人材の情報不足と、担当者が代わると連携が引き継がれない属人化といった課題を示した。そのうえで、学校内での情報共有、教育委員会による仲介、一人一台端末を生かしたデジタルコンテンツの活用という改善の方向性を提示した。
このデータの読み方について注意を促したのが、板倉正哉委員(福島県相馬市立大野小学校教頭)である。小学校で実施率が下がるのは学年が上がるからではなく、学習する対象や内容が広域に変わることが背景にあると指摘し、現状を示す数字として提示する際には注意が要ると述べた。
「見学に行くと決まっているから」への警鐘
委員からは、連携そのものが目的になってしまう危うさへの指摘が相次いだ。大村龍太郎委員は、「この時期はここへ見学に行くと決まっているから」という慣例化した状況を現場で目にすると述べ、目的と手段が逆転していると警鐘を鳴らした。社会に開かれた学習環境は大切だが、開かれた環境をつくること自体が目的ではない、という指摘である。
中山京子委員(帝京大学教育学部教授)は、地域人材との関係が教師個人の熱意と信頼に支えられている以上、属人化はある程度避けられないと述べた。そのうえで、情報を整理して提供する仕組みだけでは現場は動かず、謝金や材料費といった経済的な支援やマンパワー、さらに教員研修まで踏み込んで示す必要があると訴えた。新保元康委員(特定非営利活動法人ほっかいどう学推進フォーラム理事長)は、連携先を博物館や資料館に限らず、地域の企業や団体にも広げるよう求めた。
土井真一主査は締めくくりで、教員が指導計画をしっかりと立て、そのなかで外部人材にどのような教育的役割を担ってもらうかを明確にすることが肝要だとまとめた。前回会合で岩戸晶子委員(奈良大学文学部文化財学科教授)から出ていた、事前調整を欠いたまま学芸員や研究者に委ねる「丸投げ型」の調べ学習への懸念にも触れ、連携はあくまで学校教育の改善につなげるための手段であって、回数を増やせばよいものではないと述べた。
用意した姿に子どもを当てはめない
会合の後半では、評価の在り方も議論された。事務局は、現行の「主体的に学習に取り組む態度」の評価が、理解が難しく教員の負担も重いという指摘を踏まえ、教育課程全体を通じた個人内評価を基本とする方向へ改める考えを示した。過度な評価材料の収集を抑えつつ、一人ひとりの良さや成長を肯定的に見取ることをねらいとしている。
この点について石井英真委員は、社会科で育てたい思考・判断・表現の学習設計とセットで「見取る姿」を考えるべきだと述べた。「見取る姿」とは、文部科学省が評価の観点別評価に「◎」を付記する際の判断材料として教科ごとに示す、子どもの具体的な姿を指す仮称の用語である。あらかじめ用意した姿に子どもを当てはめるのは本末転倒だと石井委員は指摘した。
永田忠道委員(広島大学大学院人間社会科学研究科教授、広島大学附属東雲小学校・中学校校長)も、学習者として見取る姿と、市民として育っていく人間を見取る姿は必ずしも一致しないと指摘し、社会科らしい評価のあり方を誤解のない形で示す必要があると応じた。報告者の桑原敏典教授も、他者との対話や協働を評価する際には、社会科であれば民主主義の考え方に基づくという視点が欠かせないと補足している。
升野伸子委員(昭和女子大学全学共通教育センター教授)は、評価の入り口となる「課題を見出す」段階が発達段階によっては難しいとして、具体的に示せば現場が取り組みやすくなると求めた。鈴木裕行委員も同様の懸念を示した。事務局が示した評価基準には「追究、解決に向けて見通しを持とうとしているか」「自らの学びを振り返ったり調整したりしようとしているか」といった言葉が並ぶが、この文言だけでは、教員が教室で子どものどのような発言や行動を見て「見通しを持てている」「振り返り・調整ができている」と判断すればよいのか分からない。鈴木委員は、それぞれの評価基準について、実際の授業でどんな子どもの姿として現れるのかを具体例とともに示してほしいと求めた。
土井主査は、二つの論点のいずれについても大方の委員から賛同が得られたとして、この方向で改善を進めたいとの意向を示した。時間の都合で発言できなかった委員の意見は、メールで提出のうえ議事録に掲載とされた。