ヒューリック、東大受験の名門塾「鉄緑会」を完全子会社化 教育事業の高付加価値化へ
不動産大手のヒューリック株式会社(東京都中央区、代表取締役社長・前田隆也、東証プライム、証券コード3003)は2026年7月7日、東大受験指導専門塾「鉄緑会」を運営する株式会社東京教育研(東京都渋谷区代々木一丁目55番8号、代表取締役社長・浜垣剛)の株式を100%取得し、完全子会社化することを決定したと発表した。
不動産の商社化戦略の一環
今回の株式取得は、ヒューリックが2026年2月に公表した中長期経営計画(2026年から2036年まで)に基づくものである。同計画では、成長分野へのM&Aを積極的に活用してビジネスモデルを進化させ、「不動産の商社化(コングロマリットプレミアムの創出)」によって利益成長と企業価値向上を実現することを基本戦略として掲げており、ヒューリックとシナジーが見込めるM&A案件の獲得に戦略的に取り組んできた。今回の東京教育研の完全子会社化は、この戦略に沿った案件の一つに位置づけられる。
個別指導からより高度な教育領域へ
ヒューリックは2020年9月にこども教育事業へ参入して以来、着実に事業領域を広げてきた。個別指導塾を営む株式会社リソー教育(現・株式会社リソー教育グループ)を2024年5月に連結子会社化したほか、2022年4月にはこども向けサービスをワンストップで提供する「こどもでぱーと」の展開を公表し、2029年までに首都圏で20棟程度を展開する計画を進めている。鉄緑会の参画は、こうした一連の取り組みの延長線上にあり、大学受験を見据えたより高度な教育領域への進出によって、こども教育事業のさらなる成長を実現できると判断したことによる。
少子化下でも底堅い首都圏の教育需要
背景には、教育市場をめぐる二つの構造変化がある。急速な少子化によって全国的には18歳以下人口が大きく減少する一方、首都圏の18歳以下人口は堅調に推移しており、底堅い需要が維持される構造となっている。加えて、政府による教育支援策の拡充や共働き世帯の増加によって、子ども一人当たりへの教育投資は年々増加傾向にある。ヒューリックはこうした市場環境の変化を背景に、「高付加価値教育」のニーズが今後さらに高まると確信しており、同分野に特化したこども教育事業の拡大を推進している。
圧倒的な合格実績を誇る鉄緑会
鉄緑会は、最難関大学への進学を目指す中学一年生から高校三年生を対象とした集団受験指導塾で、中高6年一貫の独自カリキュラムを特徴とする。2026年度入試では東京大学合格者584名を輩出し、全合格者に占める割合は20%に達した。とりわけ最難関とされる理科三類では合格者57名、占有率59%という高い実績を残している。
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この合格実績を支えているのが、東京大学・京都大学出身率100%を誇る専任講師陣と、独自の指定校制度である。最難関大学への進学実績が高い中高一貫校15校を指定校とし、対象校の生徒は中学一年の春に限り入会選抜試験が免除される仕組みになっている。2026年度の主要指定校通塾率を見ると、開成で48%、桜蔭で65%、筑波大学附属駒場では69%に上り、国内トップレベルの生徒層を集めている。校舎は東京(代々木エリア6校舎)を中心に、大阪、京都、兵庫(西宮)の合わせて4エリアに展開している。
不動産ノウハウと人材ネットワークによる相乗効果
ヒューリックが見込むシナジーは、大きく二つの方向に整理できる。一つは不動産面での支援である。ヒューリックは東京都心部の優良立地に不動産ポートフォリオを展開しており、そこで培った不動産開発・運営ノウハウやネットワーク、資金調達力を生かして、鉄緑会の既存エリアの拡充や将来的な新規出店を後押しする考えだ。鉄緑会はこれまで限定的な立地でしか展開してこなかった経緯があり、この点でヒューリックの不動産事業との親和性は高い。もう一つは人材面での展開可能性である。鉄緑会が抱える卒業生や現役生といったトップ層人材の人的ネットワークを、教育・人材関連の新たなサービスへとつなげていく余地があるとヒューリックは見ている。
こども教育経済圏のさらなる拡大へ
ヒューリックは、東京教育研の経営方針を尊重しながらグループの経営資源を活用し、鉄緑会のさらなる成長を支援していく方針を示している。今回の完全子会社化によって、こどもでぱーとによる不動産賃貸収益と、リソー教育や鉄緑会による運営事業収益を組み合わせた独自の「こども教育経済圏」の拡大が一段と進む見通しだ。ヒューリックは今後も同様の取り組みを通じて、持続的な成長と企業価値向上を実現していく考えを示している。
東京教育研は2009年2月に法人設立され(事業開始は1983年)、学習塾運営事業と出版事業を手掛けている。資本金は2026年7月時点で1000万円である。