【7月7日 松本洋平文部科学大臣 記者会見】「基礎研究と社会実装は両輪」 科学技術白書を閣議決定
文部科学省は2026年7月7日、「令和8年版科学技術・イノベーション白書」の閣議決定を発表した。松本洋平文部科学大臣が同日の閣議後記者会見で明らかにしたもので、特集テーマは「科学とイノベーションが切り拓く我が国の未来」。本年度が第7期科学技術・イノベーション基本計画の初年度に当たることを踏まえ、2025年のノーベル賞受賞者へのインタビューを交えながら、基礎研究の成果とイノベーション創出の実例を紹介し、基本計画が目指す政策の方向性を解説する内容となっている。
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2025年のノーベル賞では、日本の研究者2人が同時受賞を果たした。制御性T細胞を発見した坂口志文・大阪大学特別栄誉教授(免疫学フロンティア研究センター特任教授)が生理学・医学賞に、金属有機構造体(MOF)を開発した北川進・京都大学理事・副学長、高等研究院特別教授が化学賞に、それぞれ選ばれている。白書は、こうした基礎研究の到達点を社会実装につなげる道筋を主要な論点に据えている。
アニメと連携し、科学技術への関心喚起
白書の周知策として、文部科学省はテレビアニメ『攻殻機動隊 THE GHOST IN THE SHELL』とタイアップしたポスターを作成し、全国の教育委員会(小学校、中学校、高等学校等)や科学館などに約4万枚を順次配布する。同省は同作品について、科学技術・イノベーションをめぐる今日的な論点を多く含み、1989年の原作漫画の発表以来、国内外で高い評価を受けてきた作品だと位置づけた。ポスターを通じて、最先端技術や未来社会のあり方への関心を高め、科学技術への好奇心と想像力を広げる入口にしたい考えだ。
国際卓越研究大学へ前進した京都大学など訪問
松本大臣は会見で、7月3日と4日の京都府訪問についても報告した。京都大学では視察に先立って湊長博総長と意見交換を行い、国際卓越研究大学に関する期待を伝えるとともに、同大学の計画について説明を受けた。京都大学をめぐっては、7月3日付で、国際卓越研究大学の認定および体制強化計画の認可の水準を満たし得るとの有識者会議の審査結果が文部科学省から公表されており、同大学は正式な認定・認可を目指している段階にある。学内では物質-細胞統合システム拠点(アイセムス)で細胞生物学と化学の融合研究を、iPS細胞研究所で次世代のiPS細胞研究を、それぞれ視察した。
京都では大学以外の視察も重ねた。移転から3年が経過した文化庁の京都庁舎では、職員を激励し長官らと意見を交わした。京都国際マンガミュージアムでは漫画資料の収集・保管・公開の取り組みを見学し、漫画文化に関わる研究に取り組む京都精華大学の学生とも対話した。京都国立博物館では文化財修復の現場を確認し、文化財の保存と活用には人材の育成と財源の確保を一体で進める必要があるとの認識を新たにしたという。仁和寺では、文化財を次世代へ継承するための利活用の先進的な取り組みについて話を聞いた。大臣は一連の視察を通じ、京都大学の研究の卓越性や、文化庁の京都移転の成果を地方創生と文化行政の展開につなげる重要性を改めて認識したとし、今後の政策に生かす考えを示した。
校外活動のフォローアップは「萎縮につながらず」
質疑では、2026年3月16日に沖縄県名護市辺野古沖で小型船2隻が転覆し、研修旅行中だった同志社国際高等学校2年の女子生徒1人と船長の男性1人が死亡した事故に関連し、全国調査の詳細と学校現場への影響が問われた。松本大臣は、事故を踏まえて2026年4月7日に発出した通知「学校における校外活動の安全確保の徹底等について」に基づき、各学校・設置者の取り組み状況を確認するフォローアップを6月26日に各都道府県などの担当部局宛てに発出したと説明した。校外活動時の安全確保、旅行・集団宿泊的行事における留意点、適切な教育活動の実施に関する取り組み状況を確認するもので、回答期限は7月末としている。調査が学校現場の萎縮につながるとの見方に対しては、すでに要請済みの事項の状況を確認するものであり萎縮にはつながらないとの認識を示した。そのうえで、教育基本法や関係通知の趣旨の周知に努めるとともに、平和に関する学習を積極的に推進すると述べた。
「基礎研究と社会実装は両輪」
白書に関する質疑では、基礎研究の多様性と、領域の戦略的重点化を両立できるかが問われた。松本大臣は、科学とビジネスの近接化という潮流のなかで、ノーベル賞受賞者からも、基礎研究から社会実装に至る多様な人材・組織の連携や、時間軸を意識した支援の重要性について指摘を受けたと紹介した。そのうえで、高市政権が掲げる強い経済の実現に向けては、イノベーションの源泉となる基礎研究と、社会実装を見据えた研究開発は両立し得るものであり、両輪として進める方針を明言した。京都大学の視察では、北川氏のノーベル賞受賞につながった研究成果を基盤に、スタートアップ企業が実際に製品やサービスを提供している事例を聞いたとし、関係省庁と連携して基礎研究から実用化までを後押しする姿勢を強調した。
日本の研究力低迷への対応を問う質問に対しては、注目度の高い「トップ10%補正論文数」で日本が世界13位に低下していることなどを念頭に、研究力に関する課題を認めた。第7期基本計画の柱の一つに「知の基盤としての科学の再興」が位置づけられているとし、研究システムの刷新、研究大学の経営マネジメント強化による組織力の向上、基盤的経費や基礎研究への投資の大幅な拡充を進めることが重要だと述べた。科学技術の力こそが日本の豊かな成長の基本であるとの思いのもと、断固たる決意で研究力の抜本的強化に取り組むとして、会見を締めくくった。