教育分野のAI活用、世界市場の急拡大を予測 米調査会社
米調査会社 Emergen Research によると、教育分野におけるAI活用の世界市場は前例のない成長を遂げており、2024年に59億米ドル、2034年には382億米ドルに達すると予測されている。年平均成長率は20.8%と強い伸びを示す。この急成長は、世界的な教育機関のデジタル化の加速と、あらゆる学習者に対してパーソナライズされたアダプティブ学習を提供するAIの重要性が高まっていることを反映しているという。
Emergen Research・プレスリリースより
市場拡大を支えているのは、個別最適化された教育やアダプティブラーニングへの需要増、バーチャルアシスタントやAI個別指導システムの普及、さらには学校運営の効率向上といった複数の要因だ。各国の教育機関や政府は、教育格差の是正、教師不足、テクノロジー化が進む社会に対応した労働力の再教育といった課題に向け、AI活用に積極的に投資している。
アジア太平洋地域はAI教育導入の中心地として存在感を高めており、2024年には世界市場の約38%を占める見込みだ。同地域の強さは、政府主導の施策、教育インフラの急速なデジタル化、中国・インド・日本・東南アジアを軸とするEdTechエコシステムの発展による。
日本と韓国はアジア太平洋地域の12%以上の収益を占め、重要なイノベーション拠点として位置付けられている。日本のAI教育市場は特に成長が期待され、2025年に21億米ドル、2032年には203億米ドルに達し、年平均成長率35.8%で拡大すると見込まれる。この急成長は、日本の人口減少・少子化という構造課題と、教育の変革に向けた政府の方針が背景にある。
文部科学省は教育改革の柱としてAI導入を優先し、公立学校の60%でAI語学ラボやアダプティブテストの利用を可能にしている。ベネッセホールディングスやソフトバンクはAIを用いた個別指導プログラムを展開し、市場拡大に向けた基盤を築いている。さらに、ソニーとソフトバンクはAI語学ラボの共同実証を成功させ、大規模導入の実現可能性を示した。
日本市場の拡大を牽引しているのは、高齢化・少子化に対応した効率的な教育提供の必要性、そして国際競争力のある高度人材の育成だ。AI活用プラットフォームは、学習者ごとの成果に応じてコンテンツや学習ペースを動的に調整するアダプティブ学習を実現し、従来の画一的教育から大きく進化している。これにより、K-12(幼稚園から高校)、高等教育、企業研修といった各領域で学習成果の向上が期待されるとしている。