【文科省議事録詳報】認証評価で不適合の大学へ対応強化検討 データ公開新基盤「Univ-map」も議論
文部科学省は7月31日、中央教育審議会大学分科会質向上・質保証システム部会(部会長・伊藤公平慶應義塾長)の議事録を公式サイトで公開した。同部会の第10回会合は6月29日、オンラインと対面を組み合わせた形式で開かれ、その様子はYouTubeでも配信された。会合では、認証評価で「不適合」と判定された大学への対応方針と、大学の評価結果や基本情報を一元的に公開する新しいデータ基盤の2点が議題となった。
不適合大学への対応強化案提示
会合の冒頭、文部科学省高等教育局の鈴木大学設置・評価室長が、認証評価制度における「要是正」機関への対応強化案を説明した。現在進行中の第3サイクルの認証評価で不適合と判定された大学は16校にのぼり、このうち2020年の学校教育法改正で法令違反として指定された大学は15校を数える。再評価を受けて適合と認められたのはわずか4校にとどまり、残る大学は不適合の状態が続いているという。
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こうした状況を踏まえ、文部科学省は3つの対応策を示した。1つ目は、改善が確認されるまで大学教育再生戦略推進費などの補助事業への申請資格を停止し、新学部の設置なども原則認めないという方針だ。2つ目は、報告書や資料の提出要請を一度で終わらせず、状況が改善するまで継続的に求め、必要に応じて面接や現地調査も行うという内容である。あわせて、評価結果や改善計画、改善状況を社会に公表することも義務づける方針だ。3つ目は、重大な法令違反や改善の見込みがない場合に、学校教育法第15条に基づく勧告、変更命令、廃止命令を、大学設置・学校法人審議会の審議を経て速やかに実施するという方針である。法令違反とまでは言えない場合でも、改善の指導に従わない大学については、その状況を文部科学省が社会に公表することも検討するとした。
設置審への差し戻し求める声も
この提案には委員から様々な意見が寄せられた。松尾太加志委員(北九州市立大学特任教授)は、学生の集まらない学部を閉じて新学部を設けようとする大学が、たまたま認証評価の時期と重なり不適合と判定されると、学部の改編自体ができなくなる恐れがあると指摘した。事務局はこれに対し、新しい評価制度では定員充足率ではなく教育の質を基準に判定するため、そうした懸念は生じにくいと説明した。
林隆之委員(政策研究大学院大学政策研究科教授)は、報告や資料提出の要請が具体的に何を意味するのか外部から見えにくいと述べ、手続きをより簡潔にするべきだと主張した。林委員は、要是正となった大学は一定期間内に再評価を受け、それでも改善しなければ大学設置・学校法人審議会の審査に差し戻すという案を提示した。森朋子副部会長(桐蔭横浜大学長)もこの意見に賛同し、認証評価から設置認可へ差し戻す流れを部会の資料に加えるべきだと提案した。
松居辰則委員(早稲田大学人間科学学術院人間情報科学科教授)は、大学設置の入り口段階で提出される入学者数の見込みなどの審査精度にも課題があるとし、設置認可の仕組みと認証評価は一体で見直す必要があると述べた。浅田尚紀委員(奈良県立大学前学長・名誉教授)は、評価結果を予算配分に活用する案自体が認証評価制度の大きな方針転換にあたるとし、国がより責任を持って審査に関与する体制へ移行すべきだという考えを示した。複数の委員から論点が相次いだことを受け、伊藤部会長は本件を継続審議とする方針を確認し、議題を締めくくった。
新プラットフォーム「Univ-map」を検討
続く議題では、大学の評価結果や基本情報を一元的に公開する新しいデータプラットフォーム「Univ-map(ユニマップ)(仮称)」の検討状況が示された。説明にあたった寺坂高等教育政策室長によると、現行の情報公開の仕組みである大学ポートレートは、国公立版を大学改革支援・学位授与機構が、私学版を日本私立学校振興・共済事業団がそれぞれ運営しており、システムが分かれているため利用者が必要な情報にたどり着きにくいという課題を抱えている。Univ-mapはこの2つを統合し、評価結果と大学の基本情報を組み合わせて公表することを目指す。事務局が示した案では、大学を横断的に比較できるページから、学部ごとの詳細情報を掲載する個別ページへ遷移できる構成が想定されており、掲載項目には学生の成長実感、学修時間、学生対教員比率、学費、進路状況などが挙げられた。
AIによる比較利用への懸念相次ぐ
この議題では、生成AIの普及を前提にした情報設計の必要性を指摘する声が相次いだ。濱中淳子委員(早稲田大学教育・総合科学学術院教授)は、保護者や学生が公開データを複雑だと感じた場合、複数の大学の学費や進路状況をAIに読み込ませて比較させる使い方が現実的に想定されると述べた。その際、AIがどの項目をどれだけ重視したかが利用者に見えないまま、大学間にわずかな差しかなくても大きな違いがあるように示されてしまう危険があると懸念を示した。
平子裕志委員(ANAホールディングス株式会社特別顧問)は、誤った情報さえ出さない設計にできれば、AIを使った検索支援はむしろ有効だという考えを述べた。森副部会長は、大学自らがチャットボットを内製し、伝えたい情報を反映させる方法も一案だと提案した。浅田委員と林委員は、国がすべての利用者に向けたインターフェースを作り込むには限界があるとして、データをAPIとして公開し、大学や学生が活用しやすい仕組みを整える方法を提案した。
松浦良充委員(学校法人慶應義塾常任理事・慶應義塾大学名誉教授)は、現行の大学ポートレートが十分に機能していない原因を検証しないまま新プラットフォームへ移行すれば、同じ課題を繰り返しかねないと述べた。田中正弘委員(筑波大学教育推進部准教授)は、英米の大学情報サイトで注目されている卒業後の平均収入の掲載について尋ねたが、事務局は地域差や大学ごとのデータ把握状況にばらつきがあることから、現時点での掲載は難しいとの考えを示した。
伊藤部会長は、この部会が学生向けサービスの提供を目的とする場ではなく、大学の質向上につなげるための情報公開を議論する場であるという前提を明確にする必要があると述べ、議論を締めくくった。
2つの議題とも意見が多岐にわたったため、部会はこの日は結論を出さず、事務局が当日の議論を踏まえて論点を整理したうえで改めて審議を続けることになった。