GMOペパボ、離れた端末を安全につなぐ新サービス データ主権保持でクリエイターとAI時代に対応

GMOインターネットグループのGMOペパボ株式会社(代表取締役社長・佐藤健太郎氏)は2026年7月15日、新サービスの発表会を開催し、自宅やオフィス、クラウドなど離れた場所にある端末同士を暗号化通信で直接つなぐネットワーク接続サービス「ロリポップ!ゼロトラストリンク byGMOペパボ」の提供開始を発表した。専用アプリケーションを一つ入れるだけで数分で使い始められる設計とし、個人や中小企業でも導入しやすくした。

サービス内容について説明するGMOペパボ株式会社の代表取締役社長・佐藤健太郎氏

クレジットカードの登録なしで利用できる無料プランも用意しており、同社は今後、人に代わって自律的にタスクを実行する「AIエージェント」が社内のデータやシステムへ安全にアクセスするための接続機能も追加していく方針を示している。

リモートワーク普及とVPNの限界

働く場所が多様になり、クラウドサービスの利用も広がったことで、業務に必要なデータやシステムは社内サーバーやクラウドなど複数の場所に分散するようになった。従来のVPNは通信を一つの中継装置に集約する仕組みのため、利用者が増えると混雑しやすく、中継拠点に障害が起きればネットワーク全体がつながらなくなるという弱点を抱えていた。加えて近年はVPN機器の脆弱性を狙った攻撃も相次いで報じられており、社内ネットワークからの通信であれば無条件に信頼するという従来の前提が崩れてきている。

GMOペパボ株式会社公式プレスリリースより

こうした流れを受けて、接続のたびに本人確認と権限チェックを行う「ゼロトラスト」という考え方が世界的に広がっている。ただし、これまで提供されてきたゼロトラスト対応サービスは海外製かつ大企業向けの設計が中心で、日本語によるサポートや国内法への準拠を備えながら個人や中小企業でも手軽に導入できる選択肢は多くなかった。GMOペパボはこの手薄な領域を埋める狙いで新サービスを立ち上げた。

中継装置を経由しないP2P方式を採用

「ロリポップ!ゼロトラストリンク byGMOペパボ」は、専用アプリケーションをインストールしてログインするだけで、端末同士が暗号化された通信で安全につながる仕組みだ。技術面では、高速かつ安全な通信を実現するオープンソースの暗号化技術「WireGuard」をベースにした、端末同士が直接通信するP2Pのメッシュ通信を採用し、従来のVPNのような中継装置を経由しない構成にした。特定の中継地点に依存しないため、利用者が増えても通信速度が落ちにくく、複数の拠点やクラウド環境のリソースを同じネットワーク上にあるかのように扱える。誰がどの端末やシステムにアクセスできるかはWeb上の管理画面から設定でき、用途に応じた権限管理も行える。

対応OSはiOS、Android、macOS、Windowsで、Linux版も近日中に公開する予定だ。料金プランは、クレジットカードの登録が不要で最大6ユーザーまで利用できる無料のフリープランと、参加できるユーザー数に制限のないスタンダードプラン(1ユーザーあたり月額1,200円、税込)の2種類を用意した。個人利用から無料で始め、チームでの利用が広がるのに応じてスタンダードプランへ移行できる構成としている。GMOペパボは2001年からレンタルサーバー「ロリポップ!レンタルサーバー byGMOペパボ」を提供し、2026年6月末時点で累計250万人を超えるユーザーに使われてきた運用実績と、固定IP付きVPNサービス「ロリポップ!固定IPアクセス byGMOペパボ」で培ったネットワーク提供の知見を、今回の新サービスに生かしたという。

国産インフラで日本語対応を重視

発表会では、GMOペパボ株式会社代表取締役社長の佐藤健太郎氏が自社のAI戦略について説明した。同社は個人が自由にウェブサイトを持てる環境づくりに長く取り組んできた経緯があり、近年はAIエージェントを使った表現活動が広がる一方で、国内に拠点を置くインフラ事業者がまだ乏しいという課題意識を持っているという。佐藤氏は、AIエージェントが自動でウェブサイトやアプリケーションを作り公開していく時代において、日本語での対応や円建ての料金、国内でのデータ管理を重視し、利用者が安心して使えるインフラを国内で提供していく考えを示した。

海外では基盤整備への投資が先行

海外では、AIエージェントを使いこなすための基盤やネットワークサービスへの投資を強める大手事業者の動きが相次いでいる。米国のドメイン登録事業者GoDaddy Inc.は2025年11月、AIエージェントの信頼性を確認できる仕組み「Agent Name Service(ANS)」を発表した。クラウドホスティングを手掛ける米Vercel, Inc.は2026年4月、自社の基盤上で稼働するアプリケーションのうちおよそ3割がAIエージェントによって作成されたものだと明らかにしている。コンテンツ配信網(CDN)を提供する米Cloudflare, Inc.も、2026年6月時点で自社ネットワーク上のトラフィックの50%超が人間以外による通信になったと公表しており、AIエージェントの普及に対応したインフラ整備が欧米で先行している状況がうかがえる。一方、日本国内ではこうした基盤を提供する事業者はまだ少なく、GMOペパボは今回のサービスを通じて国内でのゼロトラスト接続の普及を進めたい考えだ。

3つのサービスでAI活用を支援

GMOペパボは今回のゼロトラストリンクに先立ち、AIエージェントが作成したWebアプリをコマンド一つで公開できる「ロリポップ!デプロイナウ byGMOペパボ」と、AIエージェントが24時間365日稼働しブラウザだけで利用できる「ロリポップ!AIエージェントクラウド byGMOペパボ」を提供してきた。同社取締役CTOの栗林健太郎氏は発表会のデモンストレーションで、この3つのサービスを組み合わせることで、AIエージェントが自らウェブサイトを更新したり、離れた場所にあるパソコン上のデータへ安全にアクセスして必要な情報を検索したりといった使い方が実現できることを示した。同社はこれらのサービスを「動かす・届ける・つなぐ」という3つの機能で統合した基盤と位置づけ、国内の事業者やクリエイターがデータ主権を保ちながらAIエージェント時代に対応できる環境づくりを進める考えだ。

デプロイナウ体験会も開催

発表会の終了後には、AIエージェントが作成したWebアプリをコマンド一つで公開できる「ロリポップ!デプロイナウ byGMOペパボ」の体験会も開かれた。筆者も実際に参加し、プログラミングの知識がない状態で「宇宙に関するホームページを作って」という一文をAIエージェントに入力しただけで、宇宙をテーマにしたホームページが数分で完成した。設定や専門的な知識を必要とせず、思い付いた言葉を入力するだけでWebサイトが形になる様子は、AIエージェントが今後どのように使われていくのかを実感させるものだった。

AIエージェント自身の接続にも対応予定

発表会では、AIエージェントとの接続機能の整備と並行して、利用状況に応じたセキュリティ機能を拡充し、法人向けプランの展開も検討していく考えが示された。データを自律的に処理し通信するAIエージェントが安心して使えるネットワーク基盤をどう選ぶかは、事業者自身のデータ管理責任にも直結するテーマだ。GMOペパボは個人や中小企業向けのフリープランとスタンダードプランに加えて、人とAIエージェントの双方が同じネットワーク上で安全につながる環境を段階的に広げていく方針だ。