【文科省議事録要旨】体育WGが取りまとめ、「体育理論」改称に慎重論

文部科学省は2026年10月8日、7月10日にWeb会議と対面を組み合わせた方式で開いた中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会体育・保健体育、健康、安全ワーキンググループ(第11回)の議事録を公開した。会議の議題は「議論の取りまとめに向けた検討について」で、事務局は次期学習指導要領に向けた「体育・保健体育、健康、安全WG取りまとめ(案)」を示した。取りまとめ案には、中学校と高校の「体育理論」を「スポーツ理論」に、高校の専門学科「体育」を「スポーツ」に改めることや、プールの管理業務の民間委託に触れることなどが盛り込まれている。

主査は「体で考える力」を強調

会議ではまず、植田誠治主査代理(聖心女子大学現代教養学部教授)と友添秀則主査(環太平洋大学体育学部教授)が、これまでの議論を振り返る発表を行った。

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植田主査代理は、公益財団法人日本学校保健会が作成した授業動画をもとに保健の授業例を紹介した。中学2年生の応急手当の授業では、89.7%の生徒が「救助したいけれども何もできない」と答えたクラスのアンケートを出発点に、心肺蘇生などを実習で学ぶ。植田主査代理はまた、がんの経験がある子どもや家族をがんで亡くした子どもが教室にいることを前提に、授業を組み立てる必要性を訴えた。友添主査は、AIが人間の認知活動を代わりに担う現代では生身の体が世界とのつながりを失いやすいと指摘し、体育を「体で考える力を育む唯一の学びの場」と位置づけた。

柱は「運動との関わり方」の再整理

事務局が示した取りまとめ案の柱の一つは、体育で育てる力の整理である。これまで「学びに向かう力・人間性等」に含まれていた公正、協力、責任、参画などの要素を、「運動との関わり方」として知識・技能を中心に再整理した。友添主査は会議の終盤、この見直しが教員の抱える指導と評価の難しさを解消し、授業改善を後押しするとの見方を示した。

案ではあわせて、小学1年から高校3年までの12年間を4年ずつ3つに分ける「4-4-4」の考え方を打ち出している。小学校の低・中学年では遊びの要素を取り入れた「運動遊び」として内容を整理し、高学年以降は技能の指導が過度に高度にならないよう改める。水泳授業については、地域のプールの活用に加え、教師の負担軽減の観点からプールの管理業務を民間事業者に委託することにも触れた。高校の専門学科「体育」を「スポーツ」に改める理由について、事務局は、スポーツの推進や発展を担う力を育てる趣旨をより的確に表すためと説明した。

中学校は「体育理論」維持を求める声

意見交換では、「体育理論」の名称変更に慎重な意見が出た。佐藤豊委員(桐蔭横浜大学スポーツ科学部教授)は、中学校の体育理論は3時間しかなく、運動の授業の土台となる知識を教える時間だと指摘した。そのうえで、中学校は「体育理論」のまま残し、高校から「スポーツ理論」とする案を示した。岩佐知美委員(高槻市立冠中学校校長)も、生徒が日ごろ「体育」という教科名で学んでいることから、中学校では従来の名称が実態に合うと述べた。友添主査は、事務局と相談しながら検討するとして預かった。

現場の負担軽減や表現の精査を要望

藤原浩委員(京都市立太秦小学校校長)は、水泳学習の期間中は毎日、水質管理や水位の調整などが欠かせず、休日に出勤して対応する場合もあると説明した。そのうえで、プールの管理業務の民間委託が進むよう国に後押しを求めた。一方、佐藤若委員(静岡産業大学准教授)は、民間事業者と連携する場合でも指導を任せきりにせず、学校の教員が一緒に指導する趣旨を明記するよう要望した。前島光委員(日本女子体育大学体育学部健康スポーツ学科教授)は、学校があらかじめ全体に整える「基礎的環境整備」を含め、多様な子どもを受け入れる環境の示し方を丁寧に説明するよう提案した。案の書きぶりにも指摘が相次ぎ、吉田伊津美委員(東京学芸大学大学院教育学研究科(教育実践創成講座)教授・学長補佐)は、小学4年までを「神経系の発達が完成に近づく」時期とする表現の再検討を要望した。

修正は主査と主査代理に一任

友添主査は審議を振り返り、学校で体育や保健、健康・安全を学ぶ本質的な意義と価値を改めて明確にできた点が最大の成果だと総括した。取りまとめ案の大きな方向性は、委員からおおむね賛同を得た。この日の意見を反映した資料の修正と、教育課程企画特別部会への報告資料の作成は、友添主査と植田主査代理に一任された。WGを再び開くのは、必要が生じた場合に限られる。

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