青少年のデジタル安全を守る7原則など議論 G7デジタル・技術大臣会合、パリで開催
2026年5月29日、フランスのパリにおいてG7デジタル・技術大臣会合が開催された。この会合には、G7構成国および地域のほか、招待国や関係国際機関が参加し、デジタル・技術分野における政策の諸課題について活発な議論が行われ、成果文書として閣僚宣言などが発出された。日本からは総務省を代表して堀内詔子総務副大臣が出席し、安全な人工知能の推進や青少年保護に関する日本の取り組みと姿勢について発言を行った。
Photo by Nathaphong/ Adobe Stock
本会合に参集した国と機関は、議長国であるフランスをはじめ、カナダ、ドイツ、イタリア、日本、イギリス、アメリカ、EUというG7構成国・地域である。さらに招待国としてブラジル、インド、ケニア、韓国、スイスが加わり、国際機関からはOECDが参加した。
今回の会合は、本年6月15日から17日までフランスのエヴィアンで開催が予定されているG7サミットに先立って実施された。主要な議題として、安全なAIの推進、経済成長のためのAI導入の促進、デジタル分野の強靭性と資源効率の確保、青少年のためのより安全・安心なデジタル空間の構築という4つのテーマについて議論が交わされた。
安全なAIの推進 広島AIプロセスの国際展開を加速
最初のテーマである安全なAIの推進に関し、会合では広島AIプロセスの成果を踏まえ、国際的な協調が再確認された。堀内詔子総務副大臣からは、安全なAIを推進するために広島AIプロセス・フレンズグループの裾野を発展途上国などへ一層広げることや、報告枠組みの改訂を契機として中小企業等による参加拡大を図ることが重要である旨が述べられた。成果として発出された閣僚宣言では、広島AIプロセス報告枠組みの改訂が称賛され、同プロセスが重要なマルチステークホルダー・プラットフォームであることが認識された。また、開発途上国等へのフレンズグループの更なる拡大、および本年3月に発表された広島AIプロセス・アクションプラン2026を歓迎することが示され、生成AIによる合成コンテンツの検出について専門家を交えた議論を継続することが確認された。
経済成長のためのAI導入 「オープンAI」の共通言語づくりへ
次のテーマである経済成長のためのAI導入の促進に関しては、AIのオープン性に関する用語の明確化を図る「AIのオープン性に関する機会と共通言語に関するG7ビジョン」に期待することが示された。これにより、開発から利用にいたる透明性を高め、イノベーションを阻害しない共通の理解を醸成することを目指す。
デジタル分野の強靭性と資源効率 エージェンティックAIの影響を整理
3番目のテーマであるデジタル分野の強靭性と資源効率の確保については、デジタル分野におけるレジリエンスおよび資源効率の向上に資する国際的な概観を取りまとめた議長国フランスの努力を認識することが盛り込まれた。また、エネルギー分野での知識とベストプラクティスを共有する初期の取り組みの一環として、国立情報学自動制御研究所であるInriaが主導してまとめた政策文書「エージェンティックAI:導入、普及及び影響」に留意することが確認された。
青少年のための安全なデジタル空間 G7共通7原則を策定
最後のテーマである青少年のためのより安全・安心なデジタル空間の構築に関しては、青少年の身体的、精神的、認知的な健康と発達を保護するため、「青少年のためのより安全・安心なデジタル空間を定義するG7共通原則」を支持することが決まった。この共通原則は、青少年を取り巻くデジタル空間の安全性を高めるための具体的な指針を示している。さらに、青少年が利用するデジタルサービスに関する科学的知見や評価を強化するため、新たな科学的イニシアティブの構築に向けた議論を議長国フランスが主導していくことが合意された。
この共通原則における重要なポイントは、7つの原則から構成されている。原則1では、青少年に年齢に適した体験を提供するために不可欠であるとして、プライバシーに配慮した年齢確認の重要性を掲げている。原則2では、セーフティー・バイ・デザインのアプローチにより、製品やサービスの設計段階から青少年をオンライン上の危害から守ることを求めている。原則3では、児童性的虐待コンテンツおよび同意に基づかない私的な画像の製造などを防止しなければならないと明記された。原則4では、保護者が適切に管理できるようペアレンタルコントロール・ツールが利用できるようにすべきであるとしている。原則5では、デジタル技術やメディアのリスクを認識し、オンライン上での健全な成長を促すため、情報リテラシー等を強化すべきであると定められた。原則6では、リスクの管理、評価、低減の実施などにより青少年の安全を確保することを示している。原則7では、青少年のためのより安全・安心なデジタル空間の構築は、デジタルサービス提供者と関連ステークホルダーとの協力によって実現されると結ばれている。
各国閣僚とのバイ会談・現地視察も実施
堀内副大臣は本会合の機会を捉え、各国閣僚らとの個別会談を精力的に実施した。フランス ル・エナンフ人工知能・デジタル担当大臣、ドイツ ヴィルトベルガー連邦デジタル・国家近代化大臣、イタリア アドルフォ・ウルソ企業・メイドインイタリー大臣、イギリス リズ・ケンドール英国科学・イノベーション・技術大臣、ならびにOECD 正木靖事務次長とのバイ会談を行い、それぞれ政策上の課題などについて対話を深めた。加えて、フランスの現地関係機関の視察も行い、郵便会社であるラ・ポスト、国立情報学自動制御研究所であるInria、および自動運転システム開発企業であるNavya Mobilityを訪れ、デジタル技術の社会実装や最新の研究動向についての意見交換を行った。