【5月29日文科相会見詳報】性教育「はどめ規定」や学校の「政治的中立性」をめぐり激しい論戦も

松本文部科学大臣は5月29日、定例記者会見において、児童生徒向けのクマ対策動画の公開、AIを活用した研究支援事業「SPReAD1000」の第2回公募開始、大学入試における面接必須化の狙いなど、幅広い教育・科学技術政策について発表した。後半の質疑応答では、性教育の指導要領に関する議論やスポーツ界の不祥事、学校法人の政治的中立性をめぐる指導基準のあり方について、記者団との間で激しい議論が交わされた。

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クマ対策動画の公開とAI研究支援第2回公募

会見の冒頭、松本大臣は2件の重要案件を報告した。

1件目は、5月19日のクマ被害対策閣僚会議での発言を踏まえた取り組みだ。環境省と文部科学省が協力し、児童生徒等への中期的な注意喚起を目的とした政府広報動画を作成した。この動画は1分程度のアニメーションで、クマの出没情報の確認方法や通学時の注意点、大声で話しながら歩くといった予防策のほか、遭遇してしまった際にゆっくり後ずさりして逃げるなどの対処法を分かりやすくまとめている。5月29日より政府広報オンラインおよび文部科学省ホームページで公開され、全国の教育委員会等を通じて1人1台端末を活用した視聴など、周知を徹底する方針が示された。

2件目は、科学研究におけるAI利活用を加速するための支援事業「AI for Science 萌芽的挑戦研究創出事業(SPReAD1000)」に関するものである。全国で1000件の挑戦を支援する本事業について、第2回公募を6月2日から開始することが発表された。

4月に実施された第1回公募では、学生や民間企業の研究者を含めて1万5000件を超える応募があり、審査過程には無作為抽出やAIの活用が導入されている。松本大臣は、この応募状況を研究開発現場におけるAI利活用への高い関心の表れであるとし、トップ研究を引き上げる「ARiSE」と今回の「SPReAD」を両輪で進めることで、日本がAI for Science先進国となることを目指すと述べた。

大学入試における面接必須化の狙い

令和9年度(2027年度)大学入学者選抜実施要項において、総合型選抜や学校推薦型選抜での面接が原則必須化されたことについて、その狙いと大学側の負担への懸念が問われた。

松本大臣は、高校・大学の関係団体代表者らで構成される大学入学者選抜協議会での合意を踏まえ、5月27日水曜日に各大学へ通知を出したことを明らかにした。昨年度の入試において、年内に行われる総合型選抜等の一部の大学で学力検査の成績が過度に重視されており、高校教育への悪影響が大きいとの指摘があったことが背景にある。協議会では、こうした一部の入試が「実質的な一般選抜の前倒し」であり許されるものではないと判断し、志願者の能力や意欲、適性を多面的・総合的に評価するという本来の趣旨に立ち返るため、面接の必須化を柱とする新ルールをまとめた。

令和7年度入試の実態調査によると、4年制大学の総合型選抜の93%、学校推薦型選抜の77%で既に面接が実施されている。松本大臣は、これらの選抜が2月1日以降の学力検査中心の一般選抜とは異なり、志願者の意欲や適性を時間をかけて丁寧に評価するために2月1日より前に実施が認められているものであると指摘し、各大学に趣旨の理解と適切な選抜の実施を求めた。

性教育の「はどめ規定」をめぐる議論

新聞社が実施した保護者アンケートにおいて、学校での性教育の充実を求める声が約9割、いわゆる「はどめ規定」の撤廃・見直しを求める声が約7割に上ったことについて、大臣の受け止めと今後の学習指導要領改訂への影響について質問が飛んだ。

松本大臣は、報道について承知しているとした上で、子どもたちが性に関して正しく理解し適切な行動が取れるようにすることは大変重要であるとの認識を示した。指導要領に基づき、生殖機能や妊娠などの身体的側面に加え、性的欲求への対処や性情報の適切な扱いなど多角的な学習が行われていることを説明した。

一方、「はどめ規定」に関しては、児童生徒の発達の差異が大きいことや、保護者の理解を得ながら指導する必要があることから、個別指導による対応を基本としており、文部科学省としてもその趣旨の周知に努めていると述べた。現在、中央教育審議会の担当ワーキンググループにおいて、性暴力や性犯罪に関する課題も踏まえた保健の学習全般に関する議論が進められており、個々の発達状況に応じた指導の必要性などが意見として出されていると説明した。大臣は、審議会での議論の進め方について自身の立場からの具体的な言及は控えつつ、議論を見守りながら取り組んでいきたいと述べるにとどめた。

スポーツ界の不祥事といじめ重大事態

バレーボール男子日本代表選手による違法薬物所持での逮捕や、元プロ野球選手による指定薬物使用での有罪判決など、スポーツ界で相次ぐ薬物問題について、松本大臣は「断じて許されるものではない。大変遺憾に思う」と強い不快感を表明した。文部科学省としてスポーツ団体ガバナンスコードの周知を通じてコンプライアンスの徹底を図るとともに、ナショナルトレーニングセンターへの薬物持ち込み疑惑については、現在進んでいる捜査の結果を見定めて適切に対応していくと述べた。

また、広陵高校で令和7年1月に発生したいじめ事案に関して、第三者委員会が「いじめ」と認定する調査報告書を公表したことについても触れた。詳細については所管する広島県に確認中であるため具体的な見解の言及は避けたが、いじめ重大事態調査の周知や部活動改革に関するガイドラインの徹底を通じて、部活動中も含めた暴力行為やいじめの防止に努めると語った。

学校法人の政治的中立性と指導基準

会見の後半では、同志社国際高校に対する文部科学省の指導をめぐり、過去の事例(2017年の森友学園系列の塚本幼稚園での事例)との対応の差や、政治的中立性を判断する基準の不透明さについて記者から厳しい追及がなされた。

松本大臣は、塚本幼稚園の事例について、所管が大阪府であり、文部科学省から大阪府に確認を求めた上で大阪府が適切な処分や対応を行ったと承知していると説明し、過去に遡った再検証については「現時点において考えていない」と否定した。

同志社国際高校の辺野古移設工事に関する学習活動において、何が政治的活動の助長・促進に該当したのかという問いに対しては、生徒を抗議船に乗せたこと、開会礼拝のメッセージにおける抗議活動の説明、座り込みへの参加を呼びかける文書の掲載などを挙げ、これら全体として辺野古移設反対という特定の政治的活動を助長するものにあたると判断したと説明した。

政治的活動の定義や判断基準が明確に示されておらず「ブラックボックスでの恣意的な運用ではないか」との批判に対しては、学校現場の取り組みや事象は発生の経緯や内容がそれぞれ異なるため、個別に総合的な判断をせざるを得ないと説明した。その上で、具体的な根拠を示しつつ判断を伝えているためブラックボックスではないと反論した。また、判断の対象とした期間についても、当該の修学旅行という単一の事象だけでなく、その前後も含めた教育の全体像の中で判断したものであると述べた。

東北大学・宮田教授グループの研究成果への期待

科学技術分野の話題として、東北大学の宮田敏男教授らのグループが、高齢者に4ヶ月間PAI-1(プラスミノーゲンアクチベーターインヒビター1)阻害剤を投与することで生物学的年齢が2〜3歳若返るとする臨床試験結果を公表したことについて質問があった。

松本大臣は、この研究が文部科学省の「次世代がん研究シーズ戦略的育成プログラム」における支援を受けた基礎研究の成果を発展させたものであると説明した。老化研究は、加齢性疾患の新たなメカニズム解明や健康寿命の延伸に直結する重要な分野であるとの認識を示し、文部科学省としてアカデミア発の革新的な創薬シーズの創出に向けた基礎研究の進行と、実用化に向けた切れ目のない支援体制を整えることで、我が国の成長分野である創薬・先端医療の発展に貢献していきたいと期待を寄せた。