【議事録詳報】社会教育は「地域の底抜け」を防げるか 中央教育審議会の社会教育の在り方に関する特別部会(第16回)
文部科学省は、令和8年3月9日に社会教育の在り方に関する特別部会(第16回)を文部科学省会議室およびWEB会議の併用により開催した。今回の会議では、同部会が今年の夏頃に予定している答申の骨子案が事務局から説明され、あわせて関係する有識者会議の報告書概要案や優良公民館表彰の結果が報告された。出席した委員からは、少子高齢化や過疎化に直面する地域コミュニティの基盤維持、社会教育人材の活用、若年層や民間企業の参画などをめぐり多角的な意見が交わされた。
Photo by show999/ Adobe Stock
諮問を受けた社会教育の現状と基本的な方向性
事務局から提示された答申骨子案では、第1章として社会教育をめぐる現状と課題が整理されている。少子高齢化や地域コミュニティの希薄化、AI技術の進展といった社会変化をはじめ、地域活動への当事者意識の低下や行財政資源の制約にともなう社会教育行政の縮小が指摘された。令和2年に制度化された社会教育士の称号取得者が増加する一方で、社会教育そのものの認知度向上には依然として課題が残る。
これらを踏まえ、第2章では人づくり、つながりづくり、地域づくりの好循環を生み出す基本的な方向性が示された。今後の地域課題を解決するためには、首長部局やNPO、民間事業者との連携が必要であり、社会教育人材の育成や活躍促進を柱に据える重要性が強調されている。単一の施設にとどまらないネットワークを形成し、面として社会教育を推進していく方針が盛り込まれた。
社会教育人材を中核とした連携体制と各委員による提言
第3章では、社会教育人材を中核とした社会教育の在り方が焦点となっている。地域全体の学びのオーガナイザーである社会教育主事の配置促進や、1万2000人を超える社会教育士が本業の枠を超えて学校教育、地域振興、民間企業などで素養を生かせるような環境づくりが挙げられた。社会教育主事講習に関しては、オンラインや土曜・夜間の活用による受講のしやすさ、講習内容の改善などがワーキング・グループの検討状況をもとに提示された。
意見交換において、前島根県教育委員会教育長の野津建二委員は人口減少地域における暮らしの維持に向けて、縦の世代間をつなぐことと横の課題解決を広げることの重要性を指摘し、受け手に分かりやすいメッセージを発信すべきであると言及した。一般社団法人全国高等学校PTA連合会会長の田名部智之委員は、コミュニティ・スクールの推進に向け、既存のPTAや子ども会に加え、地域で実績のある青年会議所やロータリークラブなどの奉仕団体を潤滑油として明記するよう求めた。NPO法人みらいずworks代表理事の小見まいこ委員は、次期学習指導要領との整合性を踏まえ「民主的で持続可能な社会の創り手」という理念を加え、高校生や大学生を対等なプレーヤーとして尊重する視点を提案した。
さらに、共生社会や災害対応の視点からも議論が深まった。一般財団法人熊本市国際交流振興事業団常務理事の八木浩光委員は、在留外国人の急増という現状を踏まえ、外国人住民が当事者・担い手として活躍できる視点や、やさしい日本語を活用した信頼関係構築の重要性を訴えた。ふくしま学校と地域の未来研究所代表の安齋宏之委員は、被災地の視点から地域コミュニティの基盤強化における防災や復興の視点の不可欠さを語り、市町村における社会教育担当課の体制強化への期待を示した。
関連会議の報告とこれからの法改正への展望
会議では、地域学習推進課から図書館・学校図書館の運営の充実に関する有識者会議報告書の概要案もあわせて説明された。デジタル社会や生成AIへの対応、書店の減少などを背景に、公立図書館を地域のハブとして位置づけるとともに、司書に地域ファシリテーターの役割を求める方針が示されている。また、令和8年2月に表彰式が行われた第78回優良公民館表彰について、障害者支援や外国人の日本語教育に取り組んだ国立市公民館などの事例が紹介された。
大正大学地域創生学部教授・東京大学名誉教授の牧野篤副部会長は、公民館構想80周年や社会教育法制定77周年の節目に触れ、社会の分断や孤立を背景とした社会基盤の再構築における教育行政としての社会教育の重要性を総括した。明治大学農学部教授の小田切徳美委員は、都道府県の役割の明確化や中間支援組織の明記、集落支援員と社会教育主事による動くチームの形成を提唱し、今後の社会教育法改正に向けて法前文の導入を一案として示した。杏林大学客員教授の清原慶子部会長は、委員から出されたきめ細かな提案や国・地方公共団体における推進方策の議論を今後の答申に反映させ、内容の充実を図る姿勢を示した。