経営者の「内省」と「物語」が理念経営を可能にする
どの企業にも独自の「物語」があり、そこで見出された「物語」にこそ企業の勝ち残りに資する示唆が含まれる。また、「内省」を通じて、その「物語」は解釈・再意味化されていく。理念経営における「内省」と「物語」の意義について、広島経済大学・瀬戸正則教授に話を聞いた。
大企業とは異なる
中小企業の経営特性

瀬戸 正則
広島経済大学 経営学部 教授
1958年生まれ。マツダ株式会社総務部主幹、中国経済連合会調査部長等を経て、2012年広島大学大学院 社会科学研究科 博士課程後期修了。博士(マネジメント)。2014年、広島経済大学 経済学部経営学科 教授。2019年、同大学 経営学部経営学科 教授。2020年、同大学大学院 経済学研究科 博士課程後期課程 教授。広島大学 客員教授。専門分野は経営理念論、中小企業経営論、経営組織論、経営管理論、人的資源管理論。主な著書に『戦略的経営理念論―人と組織を活かす理念の浸透プロセス』(中央経済社、2017年)。
── 瀬戸先生は中小企業における経営理念の浸透プロセスや、組織活性化の研究に取り組まれています。
私は自動車メーカーのマツダで約30年にわたり、人事や総務など管理部門を中心にキャリアを積んできましたが、在職中に社会人大学院で学び、「理念の具現化を基軸とする経営の在り方は、企業によって大きく異なるのではないか?」という問題意識を抱いていました。
大企業を対象とした経営理念に関する研究は数多くあります。一方で中小企業の経営理念に関する研究は、それほど多くはありません。しかし日本企業の99.7%は中小企業であり、中小企業は地域社会や雇用、大企業との取引関係などを通じて日本経済を支える重要な存在です。こうした背景がある中で、私は中小企業の経営理念に関する研究に取り組み、近年は大企業を含めて研究の射程を広げてきました。
多種多様な中小企業がありますが、その経営特性を大きく3つにまとめると、図表1のようになります。中小企業は大企業に比べると、組織というよりもヒト(とりわけ経営トップ)で動く傾向が強いため、「中小企業は経営者なり」と言うことができます。
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