経営理念浸透の「尺度」を開発し、企業にも有用な知見を提供

経営理念の大切さが語られる一方で、その具体的な有効性や効果は十分に検証されていなかった。産業・組織心理学の観点から経営理念を実証的に研究する立教大学・廣川佳子客員准教授に、経営理念浸透の「測定尺度」の開発と、その実践的な意義について話を聞いた。

産業・組織心理学の観点から
経営理念を実証的に研究

廣川 佳子

廣川 佳子

立教大学 経営学部経営学科 客員准教授
家電メーカー、カラーコンサルティング会社、研修会社に勤務後、独立、起業。その後、立教大学大学院現代心理学研究科で博士(心理学)を取得。立教大学大学教育・開発支援センター助教、経営学部特任准教授を経て、現職。専門は産業・組織心理学で、企業理念の浸透プロセスと組織成員の心理と行動に及ぼす影響、組織文化醸成の研究を行っている。近年クリエイティビティを促進する集団の特性やチーム・コミュニケーションの研究にも取り組んでいる。

── 廣川先生が経営理念を研究する背景にある問題意識とは、どういったものですか。

私が経営理念の研究に取り組む理由は、大きく3つあります。

1つ目は、大学教員になる前に家電メーカーに在籍していた頃、コーポレートアイデンティティ(CI)を全社に浸透させるプロジェクトに若手メンバーとして参加しました。ボトムアップでCIを組織に浸透させることは想像以上に難しく、思うような成果が得られませんでした。その経験は「理念やCIを浸透させるにはどうすればよいのか」という問題意識を持つきっかけになりました。

2つ目として、多くの企業が明文化された経営理念を掲げ、企業経営の規範としています。企業が不祥事や重大な課題に直面した際、経営者は「もう一度理念に立ち返ろう」などと呼びかけます。組織を原点から立て直す拠り所として、経営理念の大切さが語られる一方で、その具体的な有効性や効果は十分に検証されていませんでした。

(※全文:2069文字 画像:あり)

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