なぜ中小企業のDXは進まないのか 生成AIが突破口になる可能性
生成AIは中小企業の経営戦略に新たな可能性をもたらす。低コストで始められ、創造性を発揮できる生成AIは、経営者の明確なビジョンと目的意識があれば、イノベーション創出の強力なツールとなる。中小企業の生成AI活用について、神戸国際大学の松崎太亮教授に話を聞いた。
中小企業が抱える
ICT活用の根本的課題

松崎 太亮
神戸国際大学 副学長・経済学部 教授
前神戸市企画調整局ICT創造担当部長。1984年、神戸市入庁。1995年、阪神・淡路大震災が発生した翌日より神戸市ウェブサイトで被災状況を発信。2006年、国立教育政策研究所 教育情報ナショナルセンター運営会議委員、2009年、JICA「トルコ国防災教育普及支援プロジェクト」専門調査員、2012年、国会図書館東日本大震災アーカイブ利活用推進WG座長、2012~14年、武庫川女子大学文学部日本語学科非常勤講師、2017年~、デジタル庁「オープンデータ伝道師」、2019年~、総務省地域情報化アドバイザー、などを歴任。2021年、神戸国際大学経済学部教授。2024年、同大学副学長。
── 松崎先生は長年にわたり、中小企業のICT活用を研究されています。中小企業のICT活用の課題について、どのように見ていますか。
この数年、DXの必要性が言われていますが、残念ながら中小企業のDX推進はあまり進んでいません。その原因の一つは、「何のためにICTを活用するのか」という明確な目的意識を持たず、経営層から現場の担当者まで、組織全体でビジョンが共有されていない点にあります。
何となく時流に乗じてICTを導入しているだけのケースも見られ、生成AIの導入・活用でも同様のバイアスが掛かり、問題が起きています。専門的な知見を持つ人材もいないため、ICT投資やDX推進が後回しになり、一歩を踏み出せない中小企業が少なくありません。
私自身、90年代半ばに神戸市で日本初の自治体ウェブサイトを立ち上げたときも、「インターネットって何に役に立つの?」という逆風ばかりでした。阪神・淡路大震災の翌日から被災状況を発信したことで、その価値を証明できましたが、新しい技術への理解を得るのは本当に大変でした。
現在も多くの中小企業では、DXへの理解が不十分な状況が続いています。経営者は自社の成長や改革を支える手段として、ICTの価値を認識し、ビジョンを共有しなければなりません。
(※全文:2030文字 画像:あり)
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