【7月17日松本尚デジタル大臣会見】法人の「実印」、スマホ完結へ 商業登記の電子署名21日始動
デジタル庁の松本尚デジタル大臣は2026年7月17日の閣議後記者会見で、商業登記電子証明書のリモート署名方式の運用開始と、第28回「RegTechミート」の開催について発表した。会見ではあわせて、所得に連動した新たな給付制度をめぐる質疑にも応じた。
署名鍵をクラウドで一元管理
商業登記電子証明書は、法務省とデジタル庁が共同で提供する、会社・法人の代表者であることを証明する電子証明書だ。紙の印鑑証明書に相当する役割を担い、行政手続のオンライン申請や企業間の電子契約などに使われてきた。
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これまでの署名方式では、署名鍵を含む証明書ファイルを特定のパソコンに保存する必要があり、そのパソコンを持ち出せなければ手続きができないという制約があった。加えて、ファイルの複製が可能であることから、第三者による不正利用のリスクも指摘されていた。
この課題を解消するため、法務省とデジタル庁は2026年7月21日(火)から、スマートフォンの「GビズID」アプリと連携したリモート署名方式の運用を開始する。署名鍵と証明書は、法務省が構築したクラウド環境に厳重に保管される。利用者はGビズIDアプリを通じて署名を認可するだけでよく、特定の端末や場所に縛られずオンラインで手続きが完結する仕組みだ。
デジタル庁は、GビズIDが130万者を超える法人・個人事業主に利用されている点を踏まえ、スタートアップ企業を含む幅広い事業者による商業登記電子証明書の活用を後押ししたい考えを示した。
熊対策、北上市の事例を共有
もう一つの発表は、デジタル庁が主催するオンラインイベント「RegTechミート」の第28回開催だ。RegTechミートは、デジタル技術の活用を妨げるアナログ規制の見直しと並行し、規制当局や現場の担当者が知見を共有する場として、月1回程度のペースで続けられている。
今回のテーマは「熊による被害対策テクノロジー」で、過去に取り上げた同テーマの続編にあたる。岩手県北上市の取り組みを事例として紹介し、他の自治体への展開を後押しする狙いだ。北上市は2026年度、ソーラーパネルと乾電池で稼働する自動撮影型のAIカメラを導入している。熱感知センサーで動物を検知して撮影し、AIが熊と鹿・イノシシ・猿など他の動物を判別したうえで、熊と判定された場合は専用アプリを通じて担当職員のスマートフォンへ即座に通知する仕組みだ。撮影データはクラウド上に保存・管理される。
従来は住民からの通報を受けて職員が現地で熊を確認してから対応を始める流れだったが、AIによる自動検知を組み込むことで、発見から対応までの時間を大幅に短縮できるという。デジタル庁はこの事例を、全国の自治体や鳥獣対策の担当者、関連技術を持つ事業者に共有し、他地域での応用につなげたい考えを示した。RegTechコミュニティに登録済みの自治体には自動で案内が届く仕組みで、今年度はおおむね1〜2か月に1回のペースで開催を続ける方針だ。未登録の自治体には登録を呼びかけている。
給付制度、地方の役割は未定
質疑では、与野党8党が参加する社会保障国民会議 給付付き税額控除等に関する実務者会議が、所得に応じたきめ細かな給付を行う新制度を2029年度(令和11年度)に導入する方向で大筋合意したことについて質問が出た。中間とりまとめ(案)には、国と地方自治体が協力して制度を運営する方針が盛り込まれており、生活保護や児童手当のように地方自治体が担う法定受託事務を参考に検討を進めるとの記載もある。
松本尚デジタル大臣は、デジタル庁も親会議である社会保障国民会議に参加しており議論を注視してきたとしたうえで、給付を担う主体については現時点で何も決まっていないとの認識を示した。中間とりまとめ(案)には法定受託事務という語句も登場するが、社会構造の変化や情報インフラの進展に応じて国と地方の役割分担が変わりうるとも記されており、今後2年間かけて給付システムを構築する過程で、情報インフラの整備状況に合わせて役割が定まっていくとの見通しを述べた。現段階でどちらが担うかを明言することは控えるとしながらも、迅速かつ確実に国民へ給付を届けられる体制を整えることが重要であり、地方任せにする従来のやり方はできるだけ避けたいとの考えを示した。