【文科省議事録詳報】芸術教科の評価基準「見取る姿」に賛否

文部科学省は7月16日、公式サイトで中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会の芸術ワーキンググループが2026年4月20日に開いた第8回会合の議事録を公開した。次期学習指導要領の改訂に向けて、音楽、図画工作・美術・工芸、書道といった芸術系教科・科目の学習評価とICT活用の在り方を話し合った内容が明らかになった。

文化庁移管後初の改訂、8回目の会合

同ワーキンググループは2025年10月に設置され、これまで芸術系教科の目標や資質・能力の構造化について議論を重ねてきた。芸術系教科の学習指導要領に関する事務は2018年に文部科学省本省から文化庁へ移管されており、今回の改訂は移管後初めてとなる。

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第8回会合は大坪圭輔主査(武蔵野美術大学名誉教授、公益社団法人日本美術教育連合前代表理事)の進行のもと、WEB会議と対面を組み合わせた形式で開かれ、16名の委員が出席した。岡本美津子委員(東京藝術大学大学院映像研究科教授)は欠席、山内尚委員(宮城県仙台三桜高等学校校長)は途中からの出席となった。冒頭では、4月1日付で文化庁審議官に着任した梶山正司氏が紹介され、学習指導要領の改訂に関わるのは今回で3度目になるとあいさつした。

形成的評価重視へ、「見取る姿」に戸惑いの声

会合ではまず、学習評価の見直しが議論された。文化庁の説明によると、これまでの学校現場では通知表の評定につながる総括的評価に比重が偏り、授業の途中で子供の状況を把握して指導に生かす形成的評価を行う余地が乏しいという課題があった。このため今回の改訂案では、題材や単元ごとにすべての観点で評価を行うことを前提とせず、複数の題材や単元をまとめて総括的評価を行うことを認めたうえで、学期の途中は形成的評価を中心に据えるという役割分担を明確にする方向性が示された。

これに合わせて、「学びに向かう力、人間性等」の評価に関しては、児童生徒の学習過程で発揮された具体的な姿を示す「見取る姿」という考え方が新たに提案され、音楽や図画工作・美術・工芸、書道それぞれについて学年段階に応じたイメージが資料で示された。方向性そのものに賛同する委員が多かった一方、原クミ委員(福岡県教育庁福岡教育事務所主幹指導主事兼社会教育室長)は、これまで現場で使われてきた評価規準と「見取る姿」との違いが教員に伝わりにくいと指摘した。稲満美委員(世田谷区立世田谷中学校校長)も、複数の題材をまとめて評価する運用は年間を見通した高度な指導計画を必要とするため、教員の負担軽減に直結するとは限らないとの見方を示した。加藤眞太朗委員(愛知県立愛知商業高等学校教諭)は、書道科において「見取る姿」が観点別評価と個人内評価の双方に関わるように見える点を挙げ、生徒や保護者にも分かりやすい説明が今後必要になるとの考えを述べた。

ICT活用は前進、生成AIには慎重論相次ぐ

続いて話し合われたICT活用については、GIGAスクール構想によって整備が進んだ1人1台端末を、知識・技能の習得だけでなく思考を広げたり深めたりする学びにどうつなげるかが焦点となった。事務局からは、身体性を基本とする技能の習得を前提としたうえで、ICTの活用が芸術系教科・科目の本質である感性や創造性の涵養に資するものと位置づける方向性が示された。音楽科ではリコーダーの奏法を映像で確認する例、図画工作・美術・工芸科では発想や構想をタブレット上で共有する例、書道科では運筆の動画比較やデジタルアーカイブを使った鑑賞例が、それぞれ活用イメージとして紹介された。

こうした方向性に賛同する声が多く出た一方、生成AIの扱いをめぐっては慎重な意見が相次いだ。小池研二委員(横浜国立大学教育学部教授)は、生成AIの技術進歩の速さを踏まえ、何にどこまで活用してよいかを明確にする方針が必要になると述べた。新井浩委員(福島大学人間発達文化学類特任教授)も、身体を通じた体験活動とのバランスを保つ文言を学習指導要領に盛り込むべきだという考えを示した。齊藤忠彦主査代理(信州大学学術研究院教育学系/教育学部音楽教育教授)は、生成AIの普及によって人間にしかできない芸術教育の意義がむしろ増すとの見方を示しつつ、時代の変化に対応できる柔軟な記述の必要性を指摘した。

教科書「精選」方針に賛否、計画書像も課題

三つ目の論点となったのは、資質・能力の構造化を踏まえた単元・題材計画づくりと教科書の在り方である。事務局は、学習指導要領のデジタル化・表形式化を踏まえ、小学校音楽科や中学校美術科、高等学校書道科を例に、教員が題材計画を組み立てる際の思考の流れを示す参考イメージを提示した。このイメージについては、経験の浅い教員への支援策として評価する声がある一方、従来の学習指導案との関係が分かりにくいという指摘も複数の委員から出た。大泉義一委員(早稲田大学教授)は、示された計画書の型が固定的に受け止められれば、教員の創意工夫を後押しするという教科書見直しの方向性とかえって矛盾しかねないとして、多様な例を示す工夫を求めた。教科書の内容を精選する方向性についても、水戸博道委員(明治学院大学心理学部長・教授)が、教科書に掲載された豊富な資料は生涯にわたって芸術を学ぶ手がかりになるとして、内容を単純に減らすのではなく教員が選択しやすい構成に改める必要があると述べた。

会合の終盤、大坪圭輔主査は、この日出された「見取る姿」や単元計画書に関する意見を踏まえ、今後は教育課程部会の総則・評価特別部会でさらに議論を深めてほしいとまとめた。追加の意見は4月27日までに事務局へ寄せるよう案内があり、第9回会合は5月21日に開かれる予定であることが確認された。同ワーキンググループは実際にこの日程どおり第9回会合を開き、伝統・文化に関する教育の充実策などについて議論を続けている。