学生のAI活用拡大で大学教員の6割以上が「授業・課題・評価方法」を見直しへ
eラーニング専門ソリューション企業の株式会社デジタル・ナレッジ(本社:東京都台東区、代表取締役社長:はが弘明)が運営するeラーニング戦略研究所は2026年8月、大学教員を対象とした調査報告書「大学における AI活用実態調査―AIを前提とした教育・研究・大学運営の現在地―」を公開した。学生のAI活用が広がるなか、授業や課題、評価方法をすでに変更した教員は41.7%にのぼり、「今後変更予定」を含めると6割以上が見直しを実施または予定している。AI利用を前提とした授業設計への転換が、大学の現場で本格化しつつある。
教員の9割がAIの有用性を評価
教員自身の利用も広い範囲に及ぶ。校務での利用が86.1%、授業準備が70.4%、研究活動が91.3%を占め、利用頻度は「ほぼ毎日」と「週数回」を合わせて全体の71.3%に達した。87%が利用による効果を実感しており、最も多く挙がった効果は「研究活動の効率化・時間短縮」(66.1%)である。89.6%が「AIは大学教育にとって有用」と評価しており、AIが教育と研究を支える実務ツールとして定着しつつある様子がうかがえる。
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授業設計の見直しが進む背景には、学生のAI利用がレポート作成を中心に学習活動全般へ広がっている事情がある。学生の利用に対する大学側の対応は「一定条件のもとで利用を認めている」が過半数を占めた一方、約2割は運用方針を定めていない。自由記述では、レポートをAIで作成して提出する学生への戸惑いに加え、不正利用への対応、評価方法、学生の思考力低下への懸念といった課題が多く寄せられた。学生の利用ルールや運用体制には大学ごとの差があり、対応状況にはばらつきがみられる。
約7割がルール整備以上の段階
同調査では、教員のAI利用状況や大学のルール整備状況をもとに、AI活用成熟度を4段階に分類した。結果は「Lv2:限定導入段階」が28.7%、「Lv3:ルール整備段階」が36.5%、「Lv4:組織運用段階」が33.9%と、ほぼ3層に分かれた。約7割がルール整備以上の段階に達しており、個人の工夫にとどまらない組織的な活用が進みつつある。なかでもLv4の層は効果実感と有用性の評価がともに高く、LMSなど既存システムとの連携や、利用ログと管理機能の整備といった運用基盤の充実への関心も比較的高い傾向を示した。
専門分野による違いも浮かび上がった。研究活動での用途をみると、理系では「翻訳・英文作成」や「論文・研究資料作成」、情報系では「論文や資料の要約」や「プログラミング・コーディング」の割合が高く、分野の特性に沿った使い分けが定着している。授業や課題、評価方法についても、情報系は変更済みの割合が高い一方、医療系は変更していない割合が比較的高かった。必要とされる支援の内容も分野ごとに異なっており、大学全体で一律の施策を講じるのではなく、分野特性を踏まえた支援と環境整備が求められる。
調査はアンケート専門サイトを用いたWebアンケートで、2026年7月2日から7月8日にかけて実施した。対象は国公立大学と私立大学の教員で、職位は教授、准教授、講師(専任・常勤)、助教、特任教授・客員教授(常勤のみ)。有効回答数は115名で、内訳は国公立43名、私立72名、専門分野別では文系41名、理系39名、情報系13名、医療系22名である。