高校教員の65.9%、推薦入試の説明に「自信がない」 碧推薦学院調査
総合型選抜・学校推薦型選抜専門塾の碧推薦学院(運営:株式会社水曜日、代表取締役:中村京香、東京都目黒区)は現職の高校教員173名を対象に実施した「高校における推薦入試指導の実態調査」の結果を公表した。
調査によると、総合型選抜や学校推薦型選抜の違いを生徒や保護者に十分に説明する自信がないと答えた教員は65.9%にのぼった。大学・学部ごとの出願条件について確認漏れや案内の遅れを経験した教員も72.3%に達している。一方で、推薦入試の指導力を高めたいと答えた教員は83.2%にのぼり、知識や意欲の不足よりも、校内の相談体制や研修機会の乏しさが課題として浮かび上がった。
大学・学部ごとに異なる出願条件
総合型選抜・学校推薦型選抜では、大学や学部、学科によって出願資格や選考方法、提出書類、評価項目、試験時期が大きく異なる。同じ大学でも学部によって評定平均の基準が違ったり、英語資格の保有や特定科目の履修、オープンキャンパスへの参加、事前課題の提出などが条件に加わったりする場合がある。募集要項や出願資格が前年度から変更されることも珍しくなく、過去の指導経験だけでは正確な案内が難しい。
高校教員は授業や学級運営、校務分掌、部活動、保護者対応といった通常業務と並行して、生徒一人ひとりが志望する大学・学部の最新情報を集めなければならない。しかし推薦入試を専門的に相談できる担当者が校内に置かれているとは限らず、進路指導担当者や一部の経験豊富な教員に情報と業務が集中している学校も少なくない。碧推薦学院は、こうした指導を教員個人の経験や努力だけに委ねるのではなく、校内での情報共有や学校と外部専門機関との連携によって支える必要があると考え、今回の調査を実施した。
調査は「高校における総合型選抜・学校推薦型選抜の進路指導に関する実態調査」として、2026年7月1日から6日にかけて実施した。対象は、高等学校教諭免許状を保有し、調査時点で高等学校または中高一貫校の高等部に勤務しており、過去3年以内に生徒や保護者から大学進学の相談を受けた経験を持ち、担任や進路指導、教科指導、管理職いずれかの立場で進路指導に関わる現職教員である。塾・予備校のみに勤務する講師や、高校に勤務していない元教員、小中学校のみに勤務する教員、教員免許を持たない職員は対象から除いた。
調査方法は、第三者調査会社の登録モニターを用いたインターネット定量調査で、事前スクリーニングによって対象条件を確認したうえで本調査を行う二段階方式を採用した。有効回答数は173名で、単一回答や複数回答に加え、中立回答への集中を避けるため「どちらともいえない」を設けない4件法、および自由記述を組み合わせて設問を構成している。重複回答や回答時間が極端に短い回答、全設問で同一選択肢を選び続けた回答などは、有効回答から除外した。集計は単純集計に加え、教職経験年数や勤務校の設置区分、担当業務別のクロス集計を行った。
回答者の勤務校の内訳は、公立高校が107名で61.8%、私立高校が58名で33.5%、国立高校が8名で4.6%だった。担当業務は学級担任が81名で46.8%と最も多く、進路指導担当が49名で28.3%、教科指導中心が29名で16.8%、管理職・主任相当が14名で8.1%と続いた。教職経験年数は10年以上20年未満が55名で31.8%と最多で、5年以上10年未満が44名で25.4%、20年以上が42名で24.3%、5年未満が32名で18.5%だった。
説明への自信、6割超が不安
「総合型選抜、学校推薦型選抜、公募制推薦、指定校推薦などの違いを、生徒や保護者に十分に説明する自信があるか」という問いに対し、「あまり自信がない」が82名で47.4%、「十分には説明できない」が32名で18.5%となり、合計114名、65.9%が不安を感じていることが分かった。推薦入試という名称や大まかな仕組みを知っていても、個別の大学・学部について問われた際に出願資格や選考内容まで正確に説明することには難しさがあるとみられる。専願・併願の可否や評定条件、英語資格の扱い、出願時期など、実際の判断に必要な情報が多岐にわたることも背景にある。
大学・学部ごとの出願条件や選考方法について確認漏れや案内の遅れを経験したかという問いには、「何度もある」が32名で18.5%、「数回ある」が93名で53.8%となり、合計125名、72.3%が経験していた。評定平均や英語資格に加え、履修科目や卒業年度、活動実績、説明会への参加、事前課題などが出願条件となる入試もあり、出願期間が短いものや、高校1・2年生の段階から準備を進める必要がある入試も存在する。碧推薦学院は、この結果について教員が推薦入試を理解していないことを示すものではなく、確認すべき情報の種類と量が増え、通常業務と並行してすべてを漏れなく把握することが難しくなっている表れだとみている。
相談体制、若手教員ほど不足実感
推薦入試の指導について校内で専門的に相談できる教員や担当者がいるかという問いには、「一部の経験者に限られている」が83名で48.0%、「相談できる相手がほとんどいない」が37名で21.4%となり、合計120名、69.4%が校内の相談体制を十分でないと感じていた。経験豊富な教員がいても、指導方法や大学情報が学校全体で共有されていなければ、担当者の異動や退職、担当変更によってノウハウが失われる可能性がある。
教職経験年数別に見ると、相談体制の不足を感じる割合は経験の浅い層ほど高かった。教職経験10年未満は76名中59名で77.6%、10年以上20年未満は55名中38名で69.1%、20年以上は42名中23名で54.8%となり、10年未満の層は20年以上の層より22.8ポイント高い結果となった。推薦入試の指導経験が十分に蓄積されていない若手教員ほど、校内の相談先や体系的な研修を必要としている可能性がうかがえる。
負担の中心は大学ごとの情報収集
大学・学部ごとの推薦入試情報を毎年度漏れなく把握し続けることに難しさを感じるかという問いには、「強く感じる」が58名で33.5%、「ある程度感じる」が76名で43.9%となり、合計134名、77.5%が難しさを感じていた。推薦入試では大学名や学部名だけでなく入試方式ごとに募集要項を確認する必要があり、同じ名称の入試方式でも大学によって評価項目や出願条件が異なるため、制度を一般化して案内しづらい点が負担につながっているとみられる。
推薦入試の進路指導で負担を感じている業務を複数回答で尋ねたところ、「大学・学部ごとの最新情報の収集」が132名で76.3%と最も多く、「志望理由書の個別添削」が121名で69.9%、「生徒に合った入試方式の選定」が112名で64.7%と続いた。生徒ごとに志望大学や学部、興味関心、評定、保有資格、活動経験は異なるため、一斉説明だけでは対応しきれず、生徒ごとの情報収集や出願可能性の判断、活動設計、書類添削が必要になる。多数の生徒を担当する担任や進路指導担当者が、全員に十分な時間を割くことには構造的な難しさがあるといえる。
指導力向上への意欲は8割超
総合型選抜・学校推薦型選抜について、今より専門的な知識や指導力を身につけたいかという問いには、「強くそう思う」が61名で35.3%、「ある程度そう思う」が83名で48.0%となり、合計144名、83.2%が指導力を高めたいと回答した。説明や指導に不安を感じる教員が多い一方で専門知識を身につけたいという意欲は高く、消極的な姿勢ではなく、学習時間や研修機会、情報源、相談先の不足が背景にあるとみられる。
推薦入試の専門機関による教員研修や最新情報の提供、指導相談などの支援があった場合に利用したいかという問いには、「積極的に利用したい」が42名で24.3%、「内容によっては検討したい」が95名で54.9%となり、合計137名、79.2%が利用を検討すると答えた。特にニーズが高かったのは、大学・学部ごとの最新情報の提供、推薦入試の制度研修、志望理由書の添削方法、個別事例を相談できる窓口、生徒・保護者向け説明会だった。自由記述では、毎年変わる募集要項に昨年までの知識だけでは対応しきれないという声や、校内で推薦入試に詳しい教員に質問が集中しているため学校全体で知識を共有する仕組みが必要だという声、志望理由書の添削はできても大学・学部・入試方式の選定まで対応するのは難しいという声が寄せられた。
4つの論点
碧推薦学院は今回の調査結果を踏まえ、4つの論点を示している。ひとつは、出願条件が大学・学部ごとに異なる中で、確認漏れや案内の遅れを教員個人の知識不足として捉えるのではなく、膨大な情報を継続的に整理・更新する仕組みの不足として捉える必要があるという点である。もうひとつは、推薦入試に詳しい教員がいても知識やノウハウが学校全体に共有されなければ特定の教員に業務が集中するため、研修やマニュアル、情報データベース、相談窓口の整備が求められるという点だ。
さらに、83.2%が指導力向上を望んでいることから、意欲不足が問題の中心ではなく、研修機会や相談先が整備されていないために各教員が独自に情報を集めざるを得ない状況こそが課題であると指摘している。最後に、学校や学習塾が推薦入試に必要な情報収集から活動設計、志望理由書、小論文、面接指導までを単独で担う必要はなく、学校が生徒の日常を把握し、学習塾が継続的な学習支援を担い、推薦入試専門機関が制度情報や出願戦略、専門的な指導を提供するといった役割分担が必要だとしている。