笛吹市の全小中学校に生成AI活用支援 教育現場に伴走型モデル展開 ディスカバリーズ
ディスカバリーズ株式会社(東京都港区、代表取締役社長:島田 祐一朗)は2026年6月26日、山梨県笛吹市教育委員会と連携し、市内19校(小学校14校・中学校5校)の教職員を対象とした校務における生成AI活用支援の取り組みを実施したと発表した。企業向けのAI活用支援で培ってきた知見を教育現場へ初めて広げるもので、教職員が子どもと向き合う時間を確保することをめざしている。
AI使いこなしているのは管理職
ディスカバリーズは「働くすべての人たちがイノベーションをもたらす世界を創る」をミッションに掲げており、この「働くすべての人たち」には教職員も含まれると位置づけている。同社が教育現場の課題として着目したのは、学級通信の作成や保護者連絡、会議記録、指導案作成といった校務の負担が増大し、教職員が本来もっとも大切にしたい子どもと向き合う時間を圧迫しているという実態だ。加えて、生成AIの使い方や活用の可否をめぐる不安、そして管理職の姿勢が現場の活用状況を左右するという構造的な課題も存在している。
笛吹市教育委員会は2022年度から各校にICTリーダーを配置するなど、現場主導でのICT活用を推進してきた独自の体制を持つ。今回の取り組みはその土台の上に、ディスカバリーズが民間の現場で積み上げてきた活用支援の知見を加えるかたちで設計された。
ディスカバリーズ株式会社公式プレスリリースより。
支援は2026年4月から順次準備を進め、5月19日から6月19日までを「集中利用期間」と位置づけ、各校のICTリーダー計38名を中心に複数ステップで展開した。まず着手したのは現状調査だ。ICTリーダー38名を対象としたアンケートと、校長・教員へのヒアリングを組み合わせることで、推測ではなくデータと現場の声の両面から実態を把握した。
調査では、プライベートで生成AIを使った経験のある教職員が97.3%にのぼり、校務でも「ほぼ毎日」または「週に数回」使う積極的な利用層が65.4%を占めていた。その一方で、活用をさらに広げるうえでのハードルとして、「回答の正確性への不安」に次いで「管理職の考えが気になる」という声が上位に挙がった。
興味深いのは、管理職の実態だ。全職員の利用状況ログを分析したところ、校務でMicrosoft 365 Copilot Chatを最も活発に活用していたのは校長をはじめとする管理職層であり、校長の平均プロンプト提出数は月300回を超えていた。ICTリーダーが管理職の目線を気にする一方で、実際には管理職こそが生成AIを日常的に活用しているという、認識と実態のギャップが浮き彫りになった。
「やらない理由」から「やる理由」語れるように
このギャップを踏まえ、ディスカバリーズは管理職を「活用の可否を判断する立場」から「現場の挑戦を後押しする推進役」として位置づけ直す研修を実施した。「AIに任せると自分で考えなくなる」「出力の正確性が心配」「自分が使えないから推進できない」といった管理職に多い誤解を一つずつ取り上げ、正しい理解へと置き換えていく内容だ。組織として安全に使える仕組みを整えることが管理職の役割だと伝え、「やらない理由」ではなく「やる理由」を語れる管理職への転換を促した。
教職員向けには2026年5月26日、体験型研修「Copilot はじめの一歩 〜まずは触ってみよう!体験型研修〜」を現地・オンライン併用のハイブリッド形式で開催し、計70名(現地14名・オンライン最大56名)が参加した。授業1回分の指導計画の作成、学級通信の下書き生成、アンケート結果のExcel集計とWordレポート作成など、日常の校務をそのまま題材にしたハンズオン形式で進め、「明日から自分の業務に使える」という実感を重視した。研修後は5月28日から6月18日にかけて週次のフォローアップ相談会(計4回)をオンラインで実施し、現場が手を動かす期間に伴走し続ける体制を整えた。
「1人1ユースケース」で現場から現場へ広げる
また「集中利用期間中に1人1ユースケース」を合言葉に、教職員が実際に試した活用事例を収集している。うまくいった事例だけでなく、思うようにいかなかった工夫も含めて拾い上げ、学校の枠を越えて共有できる形に整理することで、現場どうしが学び合える土台とする方針だ。集中利用期間の成果を踏まえ、2026年8月上旬には全教職員を対象とした研修の実施も予定している。
笛吹市教育委員会学校教育課統括情報通信技術支援員の土田 純氏は、「管理職を含めた学校全体に前向きな変化が広がっている」と述べ、生成AIによって余剰時間を生み出し、それぞれの教職員が子どもと向き合う時間を増やせるようにしていきたいとのコメントを寄せた。
ディスカバリーズは笛吹市での実践知見を他地域の教育現場にも広げ、現場に寄り添った伴走支援を続ける方針を示している。