起業教育の活性化へ APU出口学長、iU中村伊知哉学長、夏野剛氏らが議論

一般社団法人超教育協会(石戸奈々子理事長)は7月、起業教育に熱心な学校のコミュニティ「超・起業学校」を創設すると発表した。大学や高専・高校と投資家、メンターなど関係者との連携を通じ、共同カリキュラム作りやピッチイベント開催などの活動に取り組み、全国で起業家の面的な育成を推進する方針だ。

7月20日にオンラインで開催されたキックオフイベントには、立命館アジア太平洋大学(APU)の出口治明学長、情報経営イノベーション専門職大学(iU)の中村伊知哉学長、慶應義塾大学特別招聘教授でN高理事の夏野剛氏らが登壇し、起業教育について活発な議論を行った。

学生の起業の現状について、夏野氏は「昔は挑戦心あるワイルドな学生が起業していたが、最近は学業が優秀な学生、特に理工系の学生ほど起業を考えている。企業に就職する以外の選択肢として起業が当たり前に存在するようになった」と述べた。

中村氏は『学生全員が起業にチャレンジする』を掲げて2020年に開学した iU について「想像以上に入学希望が殺到した」と述べ、若者たちの起業意欲の高まりを指摘。さらに「スティーブ・ジョブズや孫正義になりたいというよりも、身の回りの課題を解決したいという社会起業家的精神を持った学生が多い」と話した。

出口氏は2018年、APU に学長自身がリーダーを務める「起業部」を設置。「わずか1年で4社が起業し、学生の高いポテンシャルを感じた」と語った。

議論は学校における起業支援のあり方にも及んだ。N校は APU と同様に起業部を組織しており、生徒に対して投資家や実業家のアドバイスを提供したり、年間最大1,000万円の予算で会社設立等を支援している。夏野氏はこうした人的・資金的な支援に加えて、「他人と違うことをやっていいんだ、失敗してもいいんだと感じられる身近なロールモデルの存在が重要だ」と指摘する。

N校の起業部(写真)では年間最大1000万円の起業支援金を提供(プレスリリースより)

N校の起業部(写真)では年間最大1000万円の起業支援金を提供(プレスリリースより)

出口氏もこれに同意し、「起業のために一番効果的なものは、苦労しながら起業に挑む先輩の存在。ロールモデルがいるから自分もやれるんだと学生が感じられる」と話した。また出口氏は大学のキャリアセンターのあり方について、「就職を前提にエントリーシートの書き方を教えるのではなく、大学院進学や起業などの生き方も支援できるよう、改革を進める必要がある」と述べた。

超・起業学校では今後、起業教育に取り組む学校の参加を全国から募り、今年秋にもリアルイベント等の何らかのアクションを行う考えだ。中村氏は「まずは100校ぐらいのコミュニティを目指したい」と期待を述べた。出口氏は「やりたいことをやることが、一番楽しい人生。そのために、子どもたちの背中を押してあげられるプラットフォームつくりたい」と話した。