仙台育英高、文化祭を「完全キャッシュレス化」

学校法人仙台育英学園は9月8日、10月に開催する仙台育英学園高等学校の文化祭「育英祭」において、模擬店や販売ブースでの会計をすべてキャッシュレス決済で実施すると発表した。この先進的な試みは、単なる運営効率化に留まらず、生徒たちが実社会の経済を体験する金融教育の一環と明確に位置づけられている。

この取り組みの大きな目的の一つは、運営上のリスクと負担の軽減だ。現金決済を完全に廃止することで、釣銭の間違いや売上金の管理・盗難といった従来のリスクを解消。教員や生徒は煩雑な現金管理から解放され、本来の企画運営や来場者との交流に集中できる。

しかし、その本質は教育的側面にある。プレスリリースでも「文化祭、完全キャッシュレス化での金融教育」と銘打たれており、生徒たちが企画・販売・会計という一連の経済活動を、現代社会のスタンダードであるキャッシュレス環境下で経験すること自体が、生きた教材となる。

先行する他の学校事例からも、キャッシュレス化によって「売上のデータ化」という教育効果が指摘されている。どの商品がどの時間帯に売れたのかがリアルタイムで可視化されるため、生徒たちはデータに基づいた需要予測や改善策を考える、より実践的なPBL(課題解決型学習)に取り組むことが可能になる。

学校法人仙台育英学園のプレスリリースより

同学園は、かねてよりスタンフォード大学のオンライン講座導入や「投資部」の発足など、先進的な教育プログラムを導入してきた。今回の試みも、その教育DX推進の一環と言えるだろう。

一方で、デジタル決済に不慣れな来場者への配慮など、完全移行ならではの課題も存在する。今回の挑戦は、その成果と課題も含め、全国の学校が伝統的な学校行事を現代社会に適応した学びの場へと転換する上で、重要なモデルケースとなりそうだ。

「育英祭」はオープンキャンパスと同時開催で、10月11日と12日に多賀城校舎で行われる。利用できるのはクレジットカード、電子マネー、QRコード決済のみで、現金は使用できない。