奈良「飛鳥・藤原の宮都」、国内27件目の世界遺産に

2026年7月19日から29日にかけて韓国・釜山で開催された第48回世界遺産委員会は、同26日、奈良県の「飛鳥・藤原の宮都」を世界文化遺産として登録することを正式に決定した。この決定により国内の世界遺産は27件となり、文化遺産22件、自然遺産5件という内訳になった。地元の奈良県橿原市では、審議の様子を見守るパブリックビューイングの会場に大きな歓声が上がったという。

世界遺産条約が定める保護の枠組み

そもそも世界遺産は、正式名称を「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約」という国際条約に基づいて登録される仕組みだ。1972年、第17回ユネスコ総会でこの条約が採択され、貴重な文化遺産や自然遺産を損傷や破壊の脅威から守り、人類共通の財産として次の世代へ引き継ぐための国際協力の体制が定められた。日本がこの条約を締結したのは1992年で、国会の承認を経て条約が発効している。

飛鳥寺(Photo by Eric Akashi/ Adobe Stock)

この条約に基づく登録は世界全体で広がっており、ユネスコの発表によると、世界遺産の登録件数は2025年8月時点で合計1,248件にのぼる。内訳は文化遺産972件、自然遺産235件、文化と自然の両方の価値を併せ持つ複合遺産41件だ。ただしこの数字には、2026年7月の第48回世界遺産委員会で新たに決まった登録分はまだ含まれておらず、飛鳥・藤原の宮都をはじめとする今回の決定分は今後反映される見通しである。

日本の世界遺産は27件に到達

こうした世界全体の広がりの中で、日本国内の世界遺産も徐々に数を増やしてきた。1993年に法隆寺地域の仏教建造物や姫路城が同時に登録されたことを皮切りに、これまでに文化遺産22件、自然遺産5件が積み重ねられてきた。直近では2019年に百舌鳥・古市古墳群、2021年に北海道・北東北の縄文遺跡群、2024年に佐渡島の金山が登録され、そして2026年7月26日、飛鳥・藤原の宮都の登録によって国内27件目を数えるに至った。

また、登録済みの27件とは別に、日本には将来の推薦を目指す候補地もある。世界遺産を目指す国は、あらかじめ候補を暫定一覧表に記載しておく必要があり、日本の暫定一覧表には現在3件の文化遺産候補が残る。神奈川県の「古都鎌倉の寺院・神社ほか」、滋賀県の「彦根城」、そして岩手県の「平泉―仏国土(浄土)を表す建築・庭園及び考古学的遺跡群―(拡張)」の3件だ。飛鳥・藤原の宮都も、2006年に奈良県などが暫定一覧表への記載を提案してから登録まで20年を要しており、残る候補地の審査の行方にも関心が集まる。

飛鳥・藤原の宮都が示す古代国家の姿

今回新たに加わった飛鳥・藤原の宮都とは、具体的にどのような遺産なのか。奈良県明日香村、橿原市、桜井市にまたがる19の構成資産からなる考古学的遺跡群であり、6世紀末の推古天皇即位から710年の平城京遷都までのおよそ120年間に、日本列島で中央集権国家が形づくられていく過程を、飛鳥宮跡と藤原宮跡という二つの宮都の変遷を通して伝える。中心となるのは、「乙巳の変」の舞台として知られる飛鳥宮跡(明日香村)と、日本で最初の本格的な都城とされる藤原京の中心であった藤原宮跡(橿原市)だ。ほかにも、極彩色の壁画で知られる高松塚古墳、天文図が描かれたキトラ古墳、蘇我馬子の墓との説がある石舞台古墳などが構成資産に含まれている。

Photo by Paylessimages/ Adobe Stock

登録を支えた二つの評価基準


この価値は、世界遺産の評価基準に照らして裏付けられている。文化庁の発表によれば、飛鳥・藤原の宮都は評価基準のうち(ⅱ)と(ⅲ)に基づいて世界遺産一覧表に記載された。基準(ⅱ)は、中国大陸や朝鮮半島との交流と仏教伝来を示し、後の時代にも大きな文化的影響を与えた点への評価を意味する。基準(ⅲ)は、中央集権体制を基盤とした東アジアの古代宮都の形成過程を、飛鳥宮や藤原宮などの立地やレイアウト、相互の関係性や構成の変遷から示す重要な物証であると認められたことを表す。ユネスコの諮問機関イコモスは2026年6月6日の時点ですでに登録を勧告しており、住宅開発や自然災害といった懸念点を挙げつつも、資産は適切に管理されていると評価していた。

登録と併せて示された7つの勧告

登録にあたり、世界遺産委員会は評価と同時にいくつかの注文も付けている。大和三山と藤原京の立地の関係が持つ重要性を、視界範囲分析や遺産影響評価を通じて確実に守ること、キトラ古墳と高松塚古墳から取り外された壁画の保存と原位置への復帰に関する科学的研究を続けること、藤原宮跡について史跡指定の手続きをできるだけ早く完了させること、シリアル資産全体を対象にした具体的なリスクへの備えと危機対応戦略を管理システムに組み込むこと、近隣の交通が資産に与える振動の影響を継続して監視すること、既存の発信・普及の方針や計画をさらに改善して実行すること、そして地元住民や社寺の利用者の権利が管理計画にどのように反映されるかを明確にすることの7点だ。これらは登録の条件ではなく、今後の保存活動における改善点として示されている。

藤原宮跡(Photo by  E-M Photos/ Adobe Stock)

これらの勧告とあわせて、政府からは歓迎のコメントも相次いだ。登録決定を受け、高市早苗内閣総理大臣は同日付でメッセージを発表し、飛鳥・藤原の宮都が国内27件目の世界遺産となったことへの喜びと、長年にわたり保存と継承に尽力してきた奈良県の関係者への敬意を表した。あわせて、日本の宝から世界の宝となったこの遺産を確実に守り、次の世代へ引き継いでいく決意を新たにしたと述べ、国内外の多くの人々に現地を訪れてもらいたいという期待も示している。松本洋平文部科学大臣も同日、釜山での決議を受けて談話を発表し、19件の構成資産が世界文化遺産として登録されたことについて、地元をはじめとする関係者の長年の努力に深く敬意を表するとともに、関係自治体や関係省庁と連携しながら文化遺産の保護に万全を期す方針を示した。

今回の登録は、2006年に奈良県などが暫定一覧表への記載を提案してから20年を経て実現したものである。今後は、世界遺産委員会が示した勧告への対応を進めながら、地域住民や来訪者を含む幅広い関係者とともに、資産の保存と活用を両立させていく段階に入る。