「人とAIは何が違うのか?」からAIの教育利用を考える(その1)

本連載では、「学習科学(The Learning Sciences)」という最新の研究領域を核に、教育の二項対立的な議論を超え、私たちはどのように「人の学び」を捉えて、いかなる教育を実現していくことが求められているのか、事例を織り交ぜつつ考えていく。

ICTの教育利用と
学習観の深い関係

益川 弘如

益川 弘如

聖心女子大学 現代教養学部教育学科 教授
博士(認知科学)。専門は学習科学、認知科学、教育工学。一人ひとりなりに持っている「学ぶ力」を、対話を通して引き出す授業づくりや学習評価の在り方、ICT活用を追求している。また、学習観・授業観の変容に興味があり、子供たちや先生方が授業や研修を通して見直してゆけるような学習環境デザインに興味がある。

最近、ChatGPTなどの生成AI技術が話題です。学校教育においても生成AIの教育利用についての議論が活発になり、文部科学省も「リーディングDXスクール事業」において「生成AIパイロット校」を募集、令和5年度は38自治体53校が内定し、今年度末までに、授業場面での活用や校務への活用の実証がされる見通しです。

これまでも情報通信技術(ICT)の発展に合わせて幾度も教育利用が議論されてきました。そこでは、常に推進派と懐疑派が現れ、様々な視点が出されています。なぜならば、ICTとは、これまでの教育や学習活動を何らかの形で増幅させる「増幅装置」としての役割を担っているからです。

ただ、この増幅の方向が、教師や学び手にとって良い方向に向かうのか、そうでない方向に向かうのか、それは、…

(※全文:2526 文字 画像:あり)

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