探究的な学びは生徒にすべての活動を決めさせることではない

本連載では、「学習科学(The Learning Sciences)」という最新の研究領域を核に、教育の二項対立的な議論を超え、私たちはどのように「人の学び」を捉えて、いかなる教育を実現していくことが求められているのか、事例を織り交ぜつつ考えていく。

一見、学習活動は全て生徒が
決めていくように見えるが…

益川 弘如

益川 弘如

博士(認知科学)。専門は学習科学、認知科学、教育工学。
一人ひとりなりに持っている「学ぶ力」を、対話を通して引き出す授業づくりや学習評価の在り方、ICT活用を追求している。また、学習観・授業観の変容に興味があり、子供たちや先生方が授業や研修を通して見直してゆけるような学習環境デザインに興味がある。

今回は、いわゆる「探究的な学び」について考えていきましょう。図は、学習指導要領に掲載されている、探究における生徒の学習の姿を図式化したものです。それによると、最初に日常生活や社会に目を向け、生徒が自ら課題を設定しスタートします。探究の過程は、①課題の設定、②情報の収集、③整理・分析、④まとめ・表現のサイクルであり、この流れによって、自らの考えや課題が新たに更新され、探究の過程が繰り返されます。

この学習の姿から想像されるのは、総合的な探究の時間、総合的な学習の時間などで探究的な学びを生徒たちに行わせるときには、生徒に自由に課題を設定させ、自由な方法で4つのサイクルを回させることが大事だと思われがちですが、…

(※全文:2460文字 画像:あり)

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