すべての人に起業家精神を 地域一体で「生きる力」を育む

起業支援の制度はあっても、佐賀県にはそれを活用して挑戦するプレーヤーの絶対数が少ない。そうした危機感の下に立ち上げられた鳳雛塾は、ケースメソッドで学ぶ大学生・社会人向けのビジネススクールや、小学生向けのビジネス体験授業などを展開。地域で活躍する多数の人材を輩出している。

支援制度を機能させるには、
挑戦する人の育成が不可欠

飯盛 義徳

飯盛 義徳

NPO法人 鳳雛塾 理事長(ファウンダー)
慶應義塾大学 SFC研究所所長/総合政策学部 教授
佐賀市生まれ。1987年上智大学文学部卒業後、松下電器産業株式会社勤務。1992年、慶應義塾大学大学院 経営管理研究科修士課程入学。1994年、同修了後、飯盛教材株式会社入社。2002年、慶應義塾大学大学院経営管理研究科博士課程入学。2014年、慶應義塾大学総合政策学部教授。2015年、SFC研究所所長。総務省地域力創造アドバイザー、国土交通省小笠原諸島振興開発審議会委員などの委員を務める。主著に『地域づくりのプラットフォーム』(学芸出版社)、『場づくりから始める地域づくり』(学芸出版社)など多数。

横尾 敏史

横尾 敏史

NPO法人 鳳雛塾 ファウンダー
佐賀銀行 人事企画部付出向
オプティム・バンクテクノロジーズ株式会社 取締役
佐賀市出身。福岡大学法学部卒業後、佐賀銀行入行。1992年中小企業診断士を取得。2005年にNPO法人鳳雛塾を立ち上げ事務局長に就任。2013年より株式会社佐銀キャピタル&コンサルティングで投資業務を行い、2018年より株式会社オプティムに駐在。2020年に株式会社オプティムと佐賀銀行の合弁会社であるオプティム・バンクテクノロジーズ株式会社を設立し、取締役に就任(佐賀銀行人事企画部付出向)。

すべての人に起業家精神を──。佐賀市に拠点を置き、小学生から社会人まで多様な人たちの起業家精神を育む事業を展開する鳳雛(ほうすう)塾は、1999年に設立されて以来、社会人や大学生を対象とするビジネススクール事業において600名以上の卒塾生を輩出。東証一部上場企業の創業者も生まれている。OBを含めた塾生間のネットワークが築かれ、お互いに刺激を与え合い、多数の活動や事業が立ち上がってきた。また、小学生向けキャリア教育事業には延べ5000名以上が参加している。

鳳雛塾の理事長であり、慶應義塾大学総合政策学部教授である飯盛義徳氏は、「鳳雛とは鳳凰の雛を指し、『未来の英雄』という意味があります。人材育成を通して地域活性化に貢献したいという関係者の思いが、この名に込められています」と語る。

佐賀県では1990年以降、長引く不況の下で県内企業の苦境が続いてきた。その打開策として、ベンチャー創出のための助成やインキュベーション施設などの支援制度が整備されてきたが、飯盛氏はそれだけでは足りないと感じていた。

「支援制度はあるものの、佐賀県にはそれを活用して挑戦するプレーヤーの絶対数が少なく、志を同じくする人々のコミュニティも形成されていませんでした。その結果、制度の利活用も盛り上がりに欠け、せっかくの制度が経済活性化の起爆剤になり得ていないという悪循環に陥っていました」(飯盛氏)

飯盛氏は佐賀市の生まれだが、長崎県の高校に進学し、大学時代は東京で過ごした。その後、松下電器産業(現・パナソニック)に勤務し、慶應義塾大学ビジネススクールで修士号を取得した後、…

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