エコツーリズムとアートで持続可能な地域活性化を目指す

社会構想大学院大学「地域プロジェクトマネージャー養成課程」第7期修了生の谷本理恵子氏は、環境・防災コンサルタント会社に務める傍ら、エコツーリズムやアートを軸とした地域活性化に取り組んできた。受講のきっかけや本課程で得た学びなどについて話を聞いた。

地域との連携を深めるため
体形的な学びが必要だと実感

谷本 理恵子

谷本 理恵子

日本ミクニヤ株式会社
プロジェクト・コーディネーター
中央大学卒業後、環境教育プロジェクト、JICA湖沼水質保全研修、国際共同観測プロジェクト、カナダ環境省の研究者との底質改善プロジェクト等、環境関連のプロジェクトに携わる。2017年、環境・防災コンサルタント企業である日本ミクニヤ株式会社に入社。University of Roehampton(英国)にて社会人修士号取得(行政学)。一般社団法人瀬戸内海エコツーリズム協議会で、広島等瀬戸内海域でのエコツーリズム推進による地域活性化と環境保全への貢献を目指し活動。社会構想大学院大学「地域プロジェクトマネージャー養成課程」第7期修了生。

「地域プロジェクトマネージャー養成課程」(以下「本課程」)では、地域活性へ向けた産官学連携プロジェクトを計画・運営する際に、様々な利害関係者の「架け橋」となり、プロジェクト全体をマネジメントする「ブリッジ人材」を育成する。

本課程は、多様な専門家が通常学習する機会の少ない「行政視点」を多く取り入れながら、地方自治体の考え方、地域活性化や産官学連携の手法・事例などについて、リアルかつ現在進行形の知識・スキルを提供。また、地方自治体に政策提言を行う機会も設けている。

第7期生として本課程を修了した谷本理恵子氏は、環境・防災コンサルタント会社でプロジェクト・コーディネーターを務める傍ら、エコツーリズムに関わる一般社団法人でも活動し、地域の自然と文化の保全を結ぶ多様なプロジェクトに取り組んできた。本課程に関心を持った理由について、谷本氏は「地域活性化のプロジェクトを進める中で、次のステップとして、実践ベースで体系的な学びが必要だと感じました」と話す。

広島県竹原市で実施したデザインマンホールアートプロジェクトや、アートと地域活性化を組み合わせた障壁画プロジェクトなど、地域と協働する経験を豊富に持つ谷本氏。これまでの実務から、アートと地域活性化の組み合わせに可能性を見出していたが、行政や地域との連携をさらに深化させるための視点を求め、本課程の受講を決めた。

谷本氏が携わった広島県竹原市での障壁画プロジェクト。若手アーティストが制作した障壁画は、地域の新たな財産となった。

アートと地域資源の掛け合わせで
地域課題に新たな解を見出す

本課程で得た最大の収穫は、行政の仕組みを構造的に捉えられたことだったと谷本氏は話す。

「実務でも行政と関わる機会は多くありましたが、自治体の考え方を体系的に整理して理解できたことは大きな学びでした」

同時に大きな刺激となったのが、受講生同士の議論だ。多様な分野の実務家が集まり、中間発表や最終発表で交わされる議論は、既存の枠を超えた発想の連続だったと振り返る。

「私はエコツーリズムの視点から物事を考えがちでしたが、地域活性化には多面的なアプローチがあることを実感しました。特に印象に残ったのは、エンディングノートを活用した地域プロジェクトの提案です。自分では思いつかない着眼点であり、実現には信頼関係や人間力が必要だと感じると同時に、その発想力と行動力に強く感銘を受けました」

政策提言の対象として選んだのは和歌山県紀美野町である。紀美野町は多様な自然・文化資産があり、エコツーリズムとアートを組み合わせた自身の経験を活かせると考えたからだ。現地調査では、資料だけでは分からない地域の実像に触れた。

「一つの町の中に高野山文化と藩文化という二つの歴史が共存し、地区ごとに異なる表情を持つ地域構造が非常に興味深かったです」

政策提言では、竹原市での経験をもとに「エコツーリズム+アートによる地域活性化」を提案。町内の旧校舎を若手アーティストの滞在制作用アトリエ兼ミュージアムに活用し、そこで制作された作品を旧校舎で展示、地域内外の人々に鑑賞してもらう。コミュニティバスをウィークデーは市民に、週末には観光客に提供し、移動手段を確保する。また、紀美野町の魅力をエコツアーのコンテンツとして活用し、アートと地域の魅力を同時に親しんでもらい、関係人口の増加やシビック・プライドの醸成などを狙った。

現地でのフィールドリサーチに関して、谷本氏は「紀美野町の皆さんは地域への思いが強く、外部の知見を取り入れる姿勢が印象的でした」と話す。

学びを実務へと昇華させ
多様な主体を結びつける

本課程で得た知見は、現在進行中のプロジェクトにも活かされている。デザインマンホールを物語性のある観光資源として展開する構想を提案しており、伝統芸能をモチーフにしたツーリズムや地域プロジェクトも検討中だ。地域で築いたネットワークを基盤に、夏の夜間型の文化体験ツアーも構想している。

最後に谷本氏は「本課程は多様な人が集まる場であり、切磋琢磨しながら人的ネットワークを広げられることは、自身にとてもプラスになると思います」と語った。地域資源をどのようにつなぎ、持続可能な形へと育てていくか。谷本氏は今もその可能性を広げ続けている。