東京薬科大学とトランスコスモス、薬学教育向けAI対話学習基盤を共同開発

学校法人東京薬科大学(東京都八王子市)とトランスコスモス株式会社(東京都豊島区)は2026年9月11日、トランスコスモスのAI対話トレーニングツール「trans-AI Tutor」を薬学生と薬剤師向けに最適化し、薬学教育に活用する共同取り組みを始めたと発表した。実務実習前の臨床学習支援を出発点とし、中長期的には卒後の継続学習までを一貫して支える基盤への展開を視野に入れる。2026年11月のリリースに向けて、東京薬科大学の4年次生を対象とするパイロット運用の準備を本格化させる。

これに先立ち、東京薬科大学は2026年3月10日、トランスコスモスと「2040年問題対応に向けた薬剤師業務の変革推進に関する連携協定」を締結したと発表している。この協定では、デジタルトランスフォーメーション(DX)やビジネス・プロセス・アウトソーシング(BPO)の知見を活用した薬学教育プログラムの開発を、取り組みのひとつに挙げていた。

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共同開発の背景には、薬剤師に求められる役割の変化がある。2040年に向けて、薬剤師には対人業務への一層のシフトが求められている。学生は実務実習に入る前に実践的な臨床能力を身につける必要があり、現場の薬剤師も複雑な症例やインシデントへの対応、法令改正などへの継続的な対応を迫られる。一方で、教員や学生同士によるロールプレイだけでは、十分な学修機会を提供しきれていなかった。

コンタクトセンター発の生成AIツール

そこで活用するのが「trans-AI Tutor」だ。トランスコスモスがコンタクトセンター運営の課題を解消するために自社開発した、音声対話型生成AIロールプレイングサービスである。同社のコンタクトセンターでは、オペレーター育成時の業務負担と応対品質のばらつきが課題だった。新人同士のロールプレイでは学習効果に限界があり、既存のオペレーターや管理者が顧客役を務めれば、現場の負荷や追加の工数が生じる。

社内のコンタクトセンター業務では、研修中のオペレーター1名あたりのロールプレイ回数が約7倍に増え、管理者工数に換算して2,945時間相当の研修工数を代替した事例がある。研修期間の50%短縮、生産性129%向上、成約数305件増といった成果も確認したという(いずれも参考値)。今回の取り組みでは、こうした実績と運用知見を薬学教育向けに最適化して展開する。

薬学教育向けのツールでは、患者ペルソナ(患者の人物像)を年齢や性格、病歴まで柔軟に設定できる。学生は設定した患者を相手にしたロールプレイを通じて、情報収集や情報提供など、実務実習前に必要な基礎的な臨床対応を繰り返し学ぶ。練習に使うシナリオは教員が監修し、モデル・コア・カリキュラムに準拠したものとなる。

さらに、高度で複雑な臨床症例やインシデントへの対応を学べる機能、学修状況の可視化と即時フィードバックの機能、将来的な法令改正などの情報取得を支援する機能についても、実装検証を進めていく。AIによる評価の軸となるのは、トランスコスモスがコンタクトセンター運営で培った応対品質管理とフィードバックの知見だ。

練習量の確保と指導の充実へ

こうした仕組みによって、学生は時間や人手の制約を受けにくくなり、一人ひとりに合った練習量を確保できるようになる。教員の側も、基礎的な反復練習の支援にとどまらず、個別指導や教材設計といった教育効果の高い指導に力を注ぎやすくなるとしている。

東京薬科大学の三巻祥浩学長は、実務実習や就職後に直面する複雑・困難な事例への対応から、最新の法令情報などの継続的な修得までをひとつの基盤で支える点に、学修機会の拡張という大きな意義があると述べた。実務家教員が監修したシナリオと、AIによる反復練習・自動評価の仕組みを通じて、これまでの事前実習を効果的に実践したい考えだ。トランスコスモスの高山智司上席執行役員は、人手だけでは十分にカバーしきれない学習機会やノウハウを教育現場で活用できる形に落とし込み、薬学教育の高度化に貢献したいとしている。