「やさしい日本語」から考える包摂社会 ことばを通し、互いを尊重する重要性

1995年の阪神・淡路大震災を機に、被災した外国人への情報伝達を目的に作られた「やさしい日本語」。こんにちでは行政機関などでも広く使われているが、開発の背景には、コミュニケーションを通じてお互いを認め合う、差別のない社会への思いが込められている。

在住外国人の「命を守る」
言葉として開発を開始

佐藤 和之

佐藤 和之

弘前大学 名誉教授
社会言語学が専門。構成員が混在化する地域の言語変容研究を行う。「やさしい日本語」研究はその一環。地域社会に迎えたさまざまな国からの住民を情報弱者にしないための減災研究に取り組む。2000年に「やさしい日本語」研究で消防庁長官賞と村尾学術奨励賞(神戸に貢献のあった研究に与えられる賞)を受賞。

『やさしい日本語』が生まれるきっかけは、1995年に発生した阪神・淡路大震災だった。この震災では、古くからの国際都市で外国人の居住も多い神戸市などで大規模な被害が発生した。災害時には、今何が起きているか、そして命を守るために何をするかという情報を広く伝えることが重要だが、当時の行政にはこうした際の外国人居住者への情報伝達は英語で足りるという前提があった。しかし、実際には英語で情報を発信できる人は限られていて十分な情報を流すことができず、また、被災した外国人の多くが英語を話さない人たちであることも判明した。

(※全文:3069文字 画像:あり)

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