人的資本経営の柱となる「プロアクティブ人材」実態調査 日本総研

株式会社日本総合研究所とアビームコンサルティング株式会社は、企業の人的資本経営推進におけるキーファクターの一つである、キャリア構築に向けて自律的に行動する「プロアクティブ人材」の実態と、従業員のプロアクティブ化を促進する環境要因を明らかにすることを目的として、企業に勤務する20,400人を対象とした大規模調査を実施した。

日本総研およびアビームコンサルティングは、「プロアクティブ行動」の構成概念を、キャリアを自ら築いていくための自律的な行動カテゴリーとなる、「革新行動」「外部ネットワーク探索行動」「組織化行動」「キャリア開発行動」の4つと定義している。

今回の調査では、これらのプロアクティブ行動の実践度合いを5段階で測定し、数字が大きいほど「プロアクティブ度」が高いとした。このプロアクティブ度が4.0以上の人を「プロアクティブ人材」、そして2.0以下の人を「非プロアクティブ人材」としている。

調査の結果、「従業員自身の職務成果」「キャリア実現度」「仕事への意欲」の3要素すべてにおいてプロアクティブ人材の数値は非プロアクティブ人材の2倍高く、プロアクティブ度はアウトカム(個人の職務成果やエンゲージメントなどに与える影響)に相関することが分かった。また、プロアクティブ度が高い人材は転職回数が少なく、プロアクティブ度の向上施策は人材流出にはつながらないことが示された。

こうした結果から、プロアクティブ人材のワークエンゲージメントは高く、企業業績への貢献と自ら思い描いたキャリアの実現を両立している傾向がある。企業にとっても本人にとっても理想的な「やりたいことを、業務を通じて実現し、成果が伴っている状態」にある人材と評価できる。加えて、離職という企業にとってのリスクが低い人材であることも注目したい点だ。

ただし、プロアクティブ度は20代をピークに年齢と共に下がる傾向があり、「放置すると下がる」恐れがある。一方で、プロアクティブ度は職場特性や職務特性によって数値が異なることから、マネジメント次第で維持・向上させることが可能とも言える。

日本総合研究所によると、今後は、プロアクティブ度を人的資本への投資対効果の測定指標として活用し、上司が一人ひとりのウィル(意志)に寄り添いながら、それぞれのプロアクティブ度を高めていくことが企業価値の向上に不可欠となると考えられるとしている。

230607news1-1

アウトカムとプロアクティブ度との相関関係(株式会社日本総合研究所・プレスリリースより)