国立大学法人の戦略的な経営実現に向けて

本稿では、国立大学法人が社会変革を駆動する真の経営体を目指すための議論の最前線を取り上げる

イノベーション・エコシステムを構築するための、国公私立大学等のビジョン

植草 茂樹(うえくさ・しげき)

植草 茂樹(うえくさ・しげき)

公認会計士(事業構想修士、東京工業大学特任専門員、東京農業大学客員研究員)。大手監査法人教育セクター支援室にて会計監査・経営支援を経験後、独立。日本私立学校振興・共済事業団「学校法人活性化・再生研究会」元委員、文部科学省(独)教職員支援機構自己点検評価委員、文部科学省「国立大学法人会計基準等検討会議」委員など歴任。

江端 新吾(えばた・しんご)

江端 新吾(えばた・しんご)

東京工業大学総括理事・副学長特別補佐/戦略的経営オフィス教授、内閣府政策統括官(科学技術・イノベーション担当)付上席科学技術政策フェロー。文部科学省技術・学術審議会研究開発基盤部会委員。北海道大学にて博士(理学)を取得。北海道大学 URA ステーション副ステーション長、同大総合 IR 室室長補佐を歴任した後、2019年度より東京工業大学に着任。

我が国の国公私立大学は、その設立の趣旨も異なり各々役割・機能も大きく異なっており、特に国立大学法人は、その歴史的経緯からヨーロッパ型とアメリカ型とが混在をなす独自の姿を形成している。イノベーション・エコシステムを構築していく観点から、全国各地に設立された国公私立大学等において、日本全体を見渡したビジョンの明確化が必要とされている。

国は、イノベーション創出につながる好事例を産学関係者で共有し、改革を進めるために現場が必要とする規制緩和等の政策を関係府省に提案し、制度改革につなげること、そして次世代の研究大学の経営層を育成することを目的に、産業界、大学等、政府関係者からなる「大学支援フォーラム PEAKS※1」(以下、PEAKS)を創設した。

※1 Leaders’ Forum on Promoting the Evolution of Academia for Knowledge Society

また、PEAKS での議論を受け、文部科学省は、「骨太の方針2019」に則り、指定国立大学が先導して、世界の先進大学並みの独立した、個性的かつ戦略的大学経営を可能とする大胆な改革を可及的速やかに断行するための様々な重要事項を検討するため「国立大学法人の戦略的経営実現に向けた検討会議」(以下、国大検討会議)を設置した。今回は、国立大学法人が社会変革を駆動する真の経営体を目指すための…

(※全文:2476文字 画像:あり)

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