科学技術・イノベーション政策の未来と、ニューノーマルに向けた大学改革
政府の科学技術・イノベーション施策は大学経営に大きな影響力を持つ。本稿では本年7月策定の「統合イノベーション戦略2020」と、来年度から始まる「科学技術・イノベーション基本計画」の方向性について解説する。
科学技術基本法から「科学技術・イノベーション基本法」へ
植草 茂樹(うえくさ・しげき)
江端 新吾(えばた・しんご)
科学技術基本法に「人文科学のみに係る科学技術」や「イノベーション創出」の概念が加わり、2021年4月1日から科学技術・イノベーション基本法が施行されることとなった。これは、AI や IoT など科学技術・イノベーションの急速な進展により、人間や社会のあり方と科学技術・イノベーションの関係が密接不可分となっている現状を踏まえた形で、科学技術の振興とイノベーション創出の振興を一体的に図っていくための法改正である。
これまで除外されていた法学、社会学、哲学等の人文科学1を本法律の振興対象に加えるとともに、「イノベーションの創出」の定義規定2を新設する等、我が国の科学技術イノベーション政策は大きな転換点を迎えた。
1 人文学と社会科学をあわせた法律上の呼称。
2 科学技術・イノベーション基本法において「イノベーションの創出」とは、科学的な発見又は発明、新商品又は新役務の開発その他の創造的活動を通じて新たな価値を生み出し、これを普及することにより、経済社会の大きな変化を創出することをいう。
今回の法改正を踏まえ、来年度から開始する「科学技術・イノベーション基本計画」の策定に向けた議論が活発化する中で、科学技術・イノベーション政策における大学の立ち位置についても関心が高まっていることから、本稿では「統合イノベーション戦略2020」を取り上げ、大学と科学技術・イノベーション政策の関係性について紹介する…
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