科学技術・イノベーション政策の未来と、ニューノーマルに向けた大学改革

政府の科学技術・イノベーション施策は大学経営に大きな影響力を持つ。本稿では本年7月策定の「統合イノベーション戦略2020」と、来年度から始まる「科学技術・イノベーション基本計画」の方向性について解説する。

科学技術基本法から「科学技術・イノベーション基本法」へ

植草 茂樹

植草 茂樹(うえくさ・しげき)

公認会計士(事業構想修士、東京工業大学特任専門員、東京農業大学客員研究員)。大手監査法人教育セクター支援室にて会計監査・経営支援を経験後、独立。日本私立学校振興・共済事業団「学校法人活性化・再生研究会」元委員、文部科学省(独)教職員支援機構自己点検評価委員、文部科学省「国立大学法人会計基準等検討会議」委員など歴任。

江端 新吾

江端 新吾(えばた・しんご)

内閣府政策統括官(科学技術・イノベーション担当)付上席科学技術政策フェロー、東京工業大学統括理事・副学長特別補佐/戦略的経営オフィス教授。文部科学省技術・学術審議会研究開発基盤部会委員。北海道大学にて博士(理学)を取得。北海道大学 URA ステーション副ステーション長、同大総合 IR 室室長補佐を歴任した後、2019年度より東京工業大学に着任。

科学技術基本法に「人文科学のみに係る科学技術」や「イノベーション創出」の概念が加わり、2021年4月1日から科学技術・イノベーション基本法が施行されることとなった。これは、AI や IoT など科学技術・イノベーションの急速な進展により、人間や社会のあり方と科学技術・イノベーションの関係が密接不可分となっている現状を踏まえた形で、科学技術の振興とイノベーション創出の振興を一体的に図っていくための法改正である。

これまで除外されていた法学、社会学、哲学等の人文科学1を本法律の振興対象に加えるとともに、「イノベーションの創出」の定義規定2を新設する等、我が国の科学技術イノベーション政策は大きな転換点を迎えた。

1 人文学と社会科学をあわせた法律上の呼称。
2 科学技術・イノベーション基本法において「イノベーションの創出」とは、科学的な発見又は発明、新商品又は新役務の開発その他の創造的活動を通じて新たな価値を生み出し、これを普及することにより、経済社会の大きな変化を創出することをいう。

今回の法改正を踏まえ、来年度から開始する「科学技術・イノベーション基本計画」の策定に向けた議論が活発化する中で、科学技術・イノベーション政策における大学の立ち位置についても関心が高まっていることから、本稿では「統合イノベーション戦略2020」を取り上げ、大学と科学技術・イノベーション政策の関係性について紹介する…

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