政策問題の発見と定義 社会的に作られる「問題」への戦略的対応

社会の「不都合な状態」の解決のために政策は形成されます。しかし、「不都合な状態」が放置されて いることは少なくありません。「自己責任」として政府が対応しないこともあります。今回は、政策問題は どのように作られるのか、そして、それにどのように戦略的に対応すべきか説明していきます。

問題状況の感知

秋吉 貴雄

秋吉 貴雄

中央大学 法学部 教授
一橋大学博士(商学)。専門は公共政策学、政策過程論。主に、政策決定過程の理論研究と規制改革等の事例分析とを行ってきた。近年は、政府組織における学習(政府学習)、政策プロセスのマネジメント、ルールチェンジ・ルールメイキングのプロセスと戦略といった領域に関心を持って研究を進めている。

社会が抱える様々な問題を解決するために公共政策は形成されます。まず重要になるのが、社会における「不都合な状態」の「発見」です。当たり前のことですが、社会における不都合な状態は、誰かによって発見されなければ放置されたままになります。先進国で比較的豊かな生活水準にある日本においても、食事を欠いたり、教育を受けられなかったりする子どもが一定数いるという問題は「子どもの貧困」としてよく知られています。この問題もまず誰かによってその問題状況が発見されることによって対策が検討されることになりました。

それではどのような要因によって社会の不都合な状況は発見されるのでしょうか。

第一が「重大事件の発生」です。痛ましい事件や事故が発生するとメディアによって連日報道され、…

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