阿部俊子文部科学大臣 火星探査、AI戦略、働き方改革など政策説明 9月16日会見要旨
9月16日に行われた阿部俊子文部科学大臣の記者会見では、冒頭、長崎県への出張と大学入学共通テストのWeb出願開始について報告があった。
長崎県訪問と大学入学共通テストWeb出願開始
大臣は週末に長崎県を訪問し、14日には天皇皇后両陛下御臨席のもと第40回国民文化祭「ながさきピース文化祭2025」開会式に出席、15日には長崎大学、長崎純心大学、国立諫早青少年自然の家を視察し、関係者と意見交換を行った。
また、16日から令和8年1月実施の大学入学共通テストの出願が開始されたことを発表。従来は高校を通じた郵送出願だったが、今回から受験生個人によるWeb出願へと全面移行し、現役高校生を含む全ての志願者が個人でパソコンやスマートフォンを利用して出願することになった。大学入学共通テスト出願サイトでのマイページ作成は7月1日からすでに始まっており、10月3日までに個人で出願内容の登録を済ませなければ共通テストを受験できなくなるため、文部科学省としてSNSなどを通じた周知活動を進めていくと述べた。
火星探査とJAXAのMMX計画
記者からの質問に対し、まずNASAの無人探査車「パーシビアランス」が火星で生命の痕跡の可能性のある物質を発見したことについて、JAXAが2026年度に打ち上げを予定している火星衛星探査計画「MMX」により、火星の衛星「フォボス」から世界初となる火星圏からのサンプルを直接持ち帰ることで、火星の起源や構造に関する理解が飛躍的に発展することに期待を示した。
JAXAの公式ホームページより
AI戦略本部と文科省の役割
12日に立ち上がった政府のAI戦略本部については、石破総理から年内の基本計画決定に向けて検討を加速させるよう指示があったことを紹介。文部科学省としてAIスキルの獲得やAIリテラシー向上を含めた幅広いAI関連人材の育成・確保、AI研究開発力の強化、「AI for Science」の推進などを通じ、「世界で最もAIを開発・活用しやすい国」の実現に貢献していくと述べた。
特に日本の強みであるマテリアル分野では、科学研究向けAI基盤モデルの開発及びデータ基盤の充実・強化、AIやロボットを活用した自動・自律実験システムの開発導入を進める方針を示した。
こども性暴力防止法への対応
「こども性暴力防止法」については、12日のこども家庭庁有識者検討会の中間取りまとめを受けて、現職教員や新規採用者の性犯罪歴確認の実施にあたり、現場の負担を考慮し、こども家庭庁と連携してシステムの構築や確認時期の分散など必要な対応を協議していると説明。防犯カメラの設置については、複数の人の目が届きにくい場所などで有効な場合があるとし、保護者や児童生徒等の理解を得ながら実施する必要があるとの見解を示した。
学校の働き方改革と事務職員の負担
学校の働き方改革については、8月19日の中央教育審議会特別部会での議論を踏まえ、教師の業務の「3分類」について事務職員への過度な業務集中を防ぐため、秋頃を目途に公表予定の「指針」に業務の精選や効率化を明記する方向で検討していると述べた。令和8年度概算要求において事務職員を含む教職員定数の改善や、教員業務支援員などの支援スタッフの配置充実に向けた予算を要求していることも明らかにした。
不登校児童の健康診断
不登校児童を含めた健康診断については、受診率は把握していないものの、受診機会の確保は重要であるとし、本年5月に設置した有識者会議において、健康診断を受けることができなかった児童生徒の健康管理についても必要に応じて検討していく考えを示した。
札幌聾学校の手話訴訟
北海道の札幌聾学校の児童が、担任教諭が日本手話に堪能でないために学習の権利を侵害されたとして北海道に損害賠償を求めた訴訟で、11日に札幌高裁が一審札幌地裁判決を支持して請求を棄却したことについて、大臣は個別の判決へのコメントは控えつつ、障害のある子供一人ひとりの教育的ニーズに応じた適切な指導や支援が重要であると述べた。
「科学の再興」委員会
最後に、6月のCSTI基本計画専門調査会の論点整理案で基礎研究力の抜本的強化を目指した「科学の再興」が示されたことを受けて、文部科学省として「科学の再興」の具体的な対応策を検討すべく有識者会議を立ち上げたことを説明。年度末に決定予定の次期「科学技術・イノベーション基本計画」に議論を反映させたいと述べた。