高校生の「未来を築く学び」調査の結果を公表 先端教育機構

学校法人先端教育機構は11月30 日、全国の高校生を対象に「教科に捉われない学び」の実態把握のため高校生の「未来を築く学び」調査を実施し、80名の高校生から回答を得ましたので、その結果を公表します。

1.集計結果サマリ

・教科に捉われない学びに関して、過半数の高校生は「学びたいことがある」と回答。
・一方で、回答「現在学習している」は半数以下に留まる。
・学問的あるいは職業的内容より、社会で起きていることを学びたいとする回答が多い。
・現状の学び方は、回答「インターネットで調べる」「動画を見る」が多い。
・望む学び方は、回答「詳しい人に教えてもらう」「興味関心が近い友達と対話・議論する」が多い。

2.調査の意図 – 興味関心を元にした学びを、高校生自身はどう捉えているのか? -

昨今、学校教育において、生徒一人一人の興味関心を大切にした学びの重要性が議論されるようになっている。実際、高校においては2022年度に新学習指導要領が年次進行で実施され、教科「総合的な探究の時間」が必修化される。これにより、一人一人が興味関心を元に学習内容を設定し、探究的に学んでいく機会も増えるだろう。また、経済産業省「未来の教室ビジョン」では、一人一人のワクワクを中核にした学びの重要性も示されている。文部科学省のみならず、経済産業省からの提言は、高校教育に少なからず影響を与えていくと考える。

こうした学びをどのように学校教育に組み込むかという制度の議論や、現場での指導法についての議論は活発になっている。一方で、実際の生徒の学びの姿を元にした議論はあまり見られず、あっても事例報告が中心である。 そこで、今回の調査では「学習者」に焦点を当て、教科に捉われない学びをテーマに調査を行った。

3.調査の概要
調査目的  高校生の「教科に捉われない学び」の実態把握
調査主体  学校法人 先端教育機構 未来を築く学び調査プロジェクト
      プロジェクトリーダー 芦野恒輔 
      (事業構想大学院大学 修士課程/「生徒の気づきと学びを最大化する」プロジェクト事務局)
      プロジェクトメンバー 「月刊先端教育」編集部
実施期間    2020年8月29日-9月21日
調査対象    日本国内の高校1年生~3年生
回答数     80人
方法      1.WEBアンケート方式
      ・先端教育オンラインのメールマガジンにて、回答を募集。
      ・調査プロジェクトメンバーのSNSにて、回答を募集。
      2.インタビュー
      ・上記回答者のうち、有志の協力者10名に依頼し、実施。

4-1.集計結果 (定量)

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4-2.集計結果 (自由記述、回答を抜粋)

設問1.具体的に、教科に捉われないことで学びたいことは何ですか。

AI、医療、LGBT問題、宗教、一般相対性理論、ビニール袋問題、SDGs、日本経済の動き、黒人差別、国際社会の関係、経済格差、人権問題、地球環境問題、プログラミング、貧困問題、雇用制度の未来 *順不同

設問6.教科に捉われない学びに取り組む際、困っていることは何ですか。

1. 学ぶ時間がない(教科の勉強に時間を取られる)
 ・時間が作れない。
 ・学校の教科の勉強が疎かになりそう。心配で気になることを始められない。
 ・現状やるべき勉強をする時間が多くなり、本や動画で学べる時間が少ない。

2. 学ぶ場所が無い(イベント、サイト等の信憑性が分からない)
 ・学べる場所を探すのが大変。
  検索しても探せなかったり、高校生対象外のこともよくある。
 ・インターネットの情報だと、正しいか判断が難しい時がある。
 ・大学に行く以外、これといって何をすれば良いか思い浮かばない。

3. 学び方が分からない(学習対象が具体化できず、進め方が分からない)
  検索しても探せなかったり、高校生対象外のこともよくある。
 ・学びたいことが曖昧で何をすべきか分からなくなり、学習が止まってしまう。
 ・正解がないことが多く、自分がどう結論付ければよいのか分からなくなる。
 ・勉強したいことが広く、どう勉強を進めるかを決めることが非常に難しい。

5.考察

過半数の高校生が、教科に捉われない学びに関して学びたいことは「ある」と回答した(66.3%)。その内容としては、AI、LGBT、環境問題、経済、宗教、格差など、非常に多様なものだった。多くの高校生が、一人一人異なる「学びたいこと」を持っていると見ることができる。

一方で、実際に学んでいることが「ある」と回答した生徒は少ない(28.8%)。その理由は、自由記述で類似意見として挙げられた3点、①学ぶ時間がない、②学ぶ場所がない、③学び方がわからないが背景にあると推測される。①学ぶ時間がないに関しては、部活動も含めた学校滞在時間を除くと、学校・塾に課された宿題/課題をこなす時間でほぼ可処分時間を使ってしまうという声が見られた。また②学ぶ場所がない、③学び方がわからないに関しては、学ぶ意欲を持っても、どこで、何を用いて、どのように学びを進めて良いかわからないという声が多かった。

また、現在の学習方法としては、「インターネットで調べる」、「動画を見る」、という回答が多かった。しかし、一方で、より望む形での学習方法に対しては「その内容に詳しい人に教わりたい」、「興味関心が近い仲間と対話/討論したい」という回答も多かった。こうした回答からも、教科に捉われない学びを、どこで、何を用いて、どのように学びを進めて良いかわからないという悩みへの裏返しと考えられるのではないか。

調査回答者の高校生数名に、インタビューも行った。その中で、複数の高校生が共通して話していたことが2つある。1つは、日常の学習の中で、同じ興味関心・熱量を持って学び合うことの難しさだ。クラスメートや部活動の仲間と、学びたいことの興味関心が一致するとは限らない。思い切り興味のあることについて学ぶ環境が、思いの外無いことを、複数の高校生が話してくれた。

もう1つは、学びをうまくスタートする難しさだ。一般的な教科の学習では、まず教科書で学び、問題集で定着を確認し演習するといった学びが一般的である。一方、教科に捉われない学びに関しては、例えばインターネットで調べても、「情報の信憑性」「興味関心との一致度合い」「情報の鮮度」が期待に沿うものでなく、すぐに学びが途切れてしまう。このような難しさを、複数の高校生が感じていた。

探究学習、STEAM教育といったキーワードが日常的になっている昨今、教科に捉われない学びについて益々期待は高まるだろう。だからこそ、より学習者の実態に寄り添った議論が進むよう、この調査が教育関係者の一助になれば幸いである。

6.終わりに

ご協力いただいた高校生、保護者の皆様、また学校の先生方に厚く御礼申し上げます。

本調査についての問い合わせ先

学校法人先端教育機構 未来を築く学び調査プロジェクト 事務局

Mail: cs@sentankyo.jp