NPO×行政で被災地を教育先進地域に

震災で甚大な被害を被った大槌町に、10代の子どもたちの心と学びを支えるべく2011年12月、認定NPO法人カタリバが開設した「コラボ・スクール大槌臨学舎」。開設を主導し学舎長も務めた菅野祐太氏は、被災地を教育先進地域とすべく、NPOと行政を股にかけて活動している。

──コラボ・スクール大槌臨学舎(以下、「大槌臨学舎」)の活動について教えてください。

菅野 祐太

菅野 祐太

認定NPO法人カタリバDISCOVERドメイン責任者
大槌町教育専門官
岩手県立大槌高等学校カリキュラム開発等専門家
兵庫教育大学大学院教育政策リーダーコース准教授
2009年、早稲田大学教育学部を卒業しリクルートキャリアに入社。2011年、東日本大震災を機に休職し、認定NPO法人カタリバが運営する「コラボ・スクール大槌臨学舎」の立ち上げに従事。2013年カタリバに転職し、大槌臨学舎の統括担当に就任。2017年より大槌町教育専門官、2019年より岩手県立大槌高等学校カリキュラム開発等専門家、2022年より岩手県高校魅力化プロデューサーを務める。他にカタリバDISCOVERドメインの責任者、兵庫教育大学大学院教育政策リーダーコース准教授も務める。

大槌町の中高生に、居場所や学習支援、体験プログラムを提供しています。

設立当時、子どもたちが抱える問題は、家の中に学べる場所がないことでした。仮設住宅には2部屋しかないため、父親がお酒を飲んでいる隣で勉強せざるを得ないような子どももいました。そのため公民館の一角を借り、全国から集まってくれた学生ボランティアと、子どもたちの勉強のサポートと心のケアを行いました。

そのうち、仮設から本設の家に移る人が増え、学ぶ場所がないという問題は解消されていきました。ところが今度は、引っ越しや転職に伴うコミュニティの再度の喪失によって、保護者がストレスを抱えるようになり、それが影響して、精神的に不安定になる子どもが増えていることが、現場の様子に加え、岩手県の調査からも分かってきました。復興後の暮らしが安定しない間は、学習支援や居場所づくりを通じて、精神的なケアを行う活動を続けていました。

現在は、大槌高校の2つの空き教室を拠点に活動しています。高校の中にあるので、レンジでお弁当を温めるためだけにやってくる生徒もいて、…

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