あらゆる教科で応用できる 小学校高学年の子どもたちの哲学対話

徐々に社会性が備わってくる小学校高学年の子どもたち。大人と変わらないような会話ができるようになってくる年頃だ。授業などでの哲学対話の実践は科学的探究の姿勢を養うことにつながり、また学校外でさまざまな大人と対話することにも大きな意義がある。

前回は、小学校低学年までのお子さんを対象とした「子どもの哲学」のやり方をご案内しましたが、今回は高学年の児童を対象とした活動をご紹介します。

子どもが小学校4年生くらいになってくると、話すことが大人とあまり変わらなくなってくる印象を受けます。逆に、幼い頃に見られた、大人では思いつかないような自由な発想も減ってきますし、だんだん社会性が身についてくる代わりに、それに捉われるようにもなってきます。例えば、日本ではジェンダーがあまりに固定的に捉えられていることが問題になっていますが、この時期の女の子は、過剰に周囲の目を気にするようになりがちです。低学年の頃の元気な発言が、女の子から消えていってしまうのは大変に残念なことです。

対話するときには、誰でもがはっきり発言して構わないこと、そして、それこそが集団への貢献なのだということを示唆すべきです。

学校での対話:
道徳、総合、理科、社会

河野 哲也

河野 哲也

立教大学文学部・教授、博士(哲学)慶応義塾大学
日本学術会議連携会員、日本哲学会など多くの学会の理事や委員を務める。専門は、現代哲学と倫理学。近年は環境の問題を扱った哲学を展開している。また、教育の問題にも関心を持ち、対話によって思考とコミュニケーション力を養う教育を、幼稚園・保育園児から高校生を対象として、多くの学校や図書館などで実践している。

小学校の授業では、どの科目でも哲学対話の要素を取り入れることができますが、これまで私が担当してきたのは、道徳科と総合的な学習の時間が多かったです。

道徳の時間では、道徳教育の目的を考えたときには、対話的な活動を取り入れることは必須だと思います。というのも、他者と対等な立場で対話をすることそれ自体が、道徳的な行為だからです。道徳性の基礎が「相手の立場に立つ」ことにあるとすれば、それは「他人を慮る」こと、つまり斟酌や忖度することにあるのではなく、他者に直接に発言してもらい、それに真剣に耳を傾けることにあるはずだからです。相手の気持ちを勝手に想像し、一方的に共感することが道徳なのではありません。他者に参加を促し、…

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