哲学対話、実践上の注意と課題 こんなときはどうする?

さまざまな考えやバックグラウンドをもつ人同士が語り合うことでお互いの違いを認めたり、共通の課題への考えを深める哲学対話。よい対話にはファシリテータの手腕も重要だ。最終回となる今回は、実践の中でしばしば生じる問題への対処法を解説する。

河野 哲也

河野 哲也

立教大学文学部・教授、博士(哲学)慶応義塾大学
日本学術会議連携会員、日本哲学会など多くの学会の理事や委員を務める。専門は、現代哲学と倫理学。近年は環境の問題を扱った哲学を展開している。また、教育の問題にも関心を持ち、対話によって思考とコミュニケーション力を養う教育を、幼稚園・保育園児から高校生を対象として、多くの学校や図書館などで実践している。

最終回の今回は、実践の中でしばしば生じてくる問題の対処方法をご紹介します。

一部の人たちだけが
話してしまう

これは非常にしばしば生じる問題です。前回に述べたように、一部の人だけが積極的に発言して、他の人たちが一言も発しないという状態は哲学対話としては望ましくありません。一部の参加者は対話に参加したという満足感が得られませんし、話が進んでいるようでも、偏った方向に行ってしまうなら議論として健康ではありません。実際に感想を聞いてみると、全然発言できなかった人の満足度は低いのです。ファシリテータはできるだけたくさんの人が参加でき、多様な意見や質問が出てくるように注意すべきです。

発言が一部の人に偏らないようにするには、…

(※全文:2459文字 画像:あり)

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